PSEのセクター分類がServices / Education、教育セクターの銘柄について調べてみました。
フィリピンには上場している大学がある
株式会社と学校法人
日本と異なり、フィリピンの私立大学には株式会社として上場しているものがあります(アメリカ式?)。非営利大学(学校法人)のメリットは税金が非課税であり、理念に沿った教育ができます。一方、営利大学(株式会社)で大学を運営するメリットはガバナンスが明確で、より実践的な教育が行われやすい?といった感じになるのでしょうか。

なお、日本でも2003年に規制緩和で私立大学の株式会社化が認められましたが、あまりメリットがないようで、ほとんど利用されていません。
季節要因
フィリピンの大学は(主に)2学期制で1学期が8月~11月、2学期が1月~5月となっています。
フィリピンの大学では、新学期は8月からスタートします。2学期制のため、以下のスケジュールで授業をすすめています。
フィリピン大学留学ナビ
1学期は8〜11月
2学期は1〜5月
このため収益は次の学期の授業料払込期日の11月と5月(12月と6月?)に集中するという季節要因があります。
また教育セクターの銘柄は決算期が5~6月末締めの銘柄が多いです(他の大多数の銘柄は12月末締め)。
6-4 → K-12
日本だと初中等の学校教育は6-3-3(小学校6年、中学校3年、高校3年)という12年制で、ほとんどの国はではこの12年が一般的です。
フィリピンは以前は6-4(小学校6年、高校4年)という10年制をとっていました。これが諸外国との制度とずれていて都合が悪い、基礎学力が低いといった問題点があり、K-12という他の国と同じ12年生の初中等教育制度へと変更されました(なおKは小学校の前の1年間の幼稚園の期間らしいです)。

コロナの影響
2020年はCOVIDの影響でロックダウン、学校も休校したりで、どこも赤字だったようです。2021年はそのリバウンドで回復しています。
PSE上場会社
教育セクターの銘柄を見ていきます。
Far Eastern University, Incorporated (FEU)
ファーイースタン大学は、マニラ、アラバン、カビテなどに(高校も含めて)10のキャンパスがあり40000人の学生を抱えています。フィリピンの大学はキリスト教系が多いらしい?ですが、ここは無宗教(non-sectarian)の大学です(ただ、ここでとりあげてる他の大学も無宗教が多いようでした)。マニラの本校はフィリピン大学ランキング2021で23位に位置しています。

卒業生には、SMグループ創始者ヘンリーシー氏、LTグループ創始者ルシオ・タン氏、サンミゲル会長のラモンアン氏など実業界の有名人がいます。
株主構成を見ると、SMグループが大株主にいます(Sysmart CorporationがたしかSMグループの会社)

長期チャートを見ると何だか異様な形を描いています。流動性は乏しい銘柄で激しく動くことがあるようです。キャンパス拡張や買収などで規模が拡大することはありますが、EPSはヨコヨコ、配当は出してますが、投資対象としては微妙な感じもします。

iPeople, inc. (IPO)
アイピープルはユーチェンコグループの持ち株会社で教育関連のビジネスに投資しています。2019年にアヤラエデュケーションと合併し、現在の株主構成はユーチェンコグループ(HI)が48%、アヤラグループ(AC)が33%の株券を保有しています。
House of Investments and Ayala Complete Strategic Merger of Education Companies (2019/5/6)

保有大学には以下のようなものがあります
- マウパ(Mapúa University) 大学ランキング21で19位
- マラヤン(Malayan Colleges)
- ヌエバ・カセレス(University of Nueva Caceres) ビコール最古で最大の大学
- ナショナル・ティーチャー(National Teachers College)
ちなみに、UniversityとCollegeは日本語に訳すと両方大学ですが、Universityは大きな総合大学、Collegeは比較的小規模の大学という違いらしいです。
ごく一般的にUniversityとCollegeの違いをまとめると、以下のようになります。
University
複数の学部・研究科から成り、大学院課程を設ける、大きな大学College
CollegeとUniversityの違い
複数の学部・研究科は存在せず、大学院課程を設けていない、小さな大学
長期チャートを見ると、2018年ぐらいから悲惨な感じになってますが・・・そろそろ底のような雰囲気も?

STI Education Systems Holdings, Inc. (STI)
STIエデュケーションシステムは、フィリピン各地に2021年時点で67のキャンバスを持つ最大のIT系の大学チェーンです。プログラムやITを学ぶ、Systems Technology Institute という名前で学校を始めましたが、現在ではITだけでなく、ビジネス、ホテルなどのコースも提供しています。街中のビルに大学が入っていて2~4年制のコースを提供している、日本で言うところの専門学校的なイメージでしょうか?
また、STI West Negros Universityという総合大学も運営しています。
タンコグループの教育関連の持ち株会社で、エスビオ・タンコ(Eusebio Tanco)氏が会長をつとめています。(タンコグループって調べてて今知りました。ATIやLRが関連会社のようです)
3月末が決算で、すでに年次レポートの期限(150日以内)が過ぎてますが、コロナの混乱で提出が遅れているようです。
チャートを見ると2006-2007年に盛り上がってますが、その後低迷しているようです。上場自体は大分前でもともとはJTH Davies Holdingsという別の名前の会社でしたが、2006年にタンコグループが買収し(裏口上場)、2012年に現在の名前になったようです。

Centro Escolar University (CEU)
セントロエスカラー大学はマニラ(メンディオラ)、マカティ、マロロスなどに複数のキャンバスをかまえる総合大学で、医療系の分野で有名です。大学ランキング2021では21位。
セントロエスカラー大学(Centro Escolar University )は無宗教の私立大学として1907年に設立されました。かつてよりセントロエスカラー大学(Centro Escolar University )は、積極的にキャンパスの拡大を行なっています。最近では、マニラのラスピニャス大学を完全買収し、大学の規模を拡大しました。さらにバギオやダバオなどにもキャンパスを拡大しようとしています。
医療の分野ではフィリピンの中でもトップレベルです。特に歯学部ではフィリピン国内で最もレベルの高い教育がなされており、その卒業資格は欧米圏でも広く認可されています。
フィリピン大学留学ナビ
バシリオ・ヤップ(Basilio C. Yap)氏が会長をつとめる、ヤップグループがオーナー(主要株主)の大学です。
本校キャンパスはマニラのMendiolaストリートにあり、この付近はマニラのユニバーシティベルトという大学が集中する場所らしいです。

卒業生ではフィデル・ラモス大統領などがいます。
長期チャートを見ると、さえない動きが続いてましたが2020年で底打ちのようにも見えます。2015年にラスピニャス大学を買収した後は売上もヨコヨコか低下気味です。

Phinma Corporation (PHN)
フィンマコーポレーションはPSEのセクター分類では教育ではないですが、子会社のフィンマエデュケーション(Phinma Education)で、7つのキャンパスの大学に投資しています。また、ミャンマー、インドネシアなどに合弁会社を設立して海外での学校展開も模索しています。
サウスウェスタン大学を昨年買収したPHINMA教育グループとは? (2016/08/3)
以上、教育セクターの銘柄を調べてみました。今回調べた銘柄を一覧すると以下のようになります。一番人気のある(PBRの高い)のはビジネス界の大物を多数輩出しているFEUのようです。
コロナの影響もありますが、教育セクター株は全般的に業績はそれほど思わしくないように見えます。教育ビジネスは人づくりという重要な分野で、人口ボーナスがまだまだ続くフィリピンでは生徒数も増えそうですが、収益が急拡大してバンバン儲かって株価が上がるというのとは少し違う感じがあります(慈善事業的な)。財閥が資本を入れて、後はうるさくいわず経営者に任さてる感じ?それほど調べてもなくて単なるイメージですが(なおフィンマは以下の表では割安に見えますが教育事業以外の売り上げが大きく単純に比較はできません)

コメント