ANSについて調べてみました。
A. Soriano Corporation (証券シンボルANS)は、ソリアノグループの持株会社です。ソリアノ財閥はアヤラとは親戚関係で、サンミゲルビールやフィリピン航空を創業したのもソリアノです。
事業内容
ANSは持ち株会社で、会社Webサイトによると以下の子会社を保有してます(過半数の株を保持して経営に関与している会社)。

- Phelps Dodge Philippines Energy Products Corporation: 電気ケーブル、ワイヤーの製造
- Seven Seas Resorts and Leisure, Inc.: リゾート運営。アマンポールリゾートとの合弁。パラワンで一泊最低20万円以上する高級ホテルを運営。
- Island Aviation, Inc.: 航空
- Prople Limited: BPO
- Ansor Holding, Inc: 不動産
- KSA Realty Corporation: 不動産
この中で(売上や利益の大きい?)主要な子会社は、電気ケーブル製造のフェルプスドッジ(Phelps Dodge Philippines Energy Product Corporation)、リゾート運営のセブンシーズリゾート(Seven Seas Resorts and Leisure, Inc)です。
上記子会社以外にも幅広い投資を行っており、上場株、非上場株、債券など投資ポートフォリオだけで140億ペソ(ANSの時価総額の半分)ほどの資産を保有しています。
年間レポートのセグメント分析を見ると、上記子会社のリゾート(Seven Seas…)と電気ケーブル(Phelps Dodge)についてはセグメントの情報が明記されています。これを見ると電気ケーブル事業の売上、利益が大きいですのがわかります。また、その他の利益の方が大きく、主要な事業は電気ケーブルですが、その他いろいろやっている会社という状況になっています。

電気ケーブル事業の売上が大きいためか、PSE Equip(PSE提供の株情報ツール)の同業比較を見ると、IMI、SSP、TECHなどが比較対象になっていて、電子製品の製造業扱いになっている感じがあります。
2022年のトータルの利益が28億ペソでしたが、22億ペソはAGP International Holdings Pte. Ltd.,売却による一時利益らしいです。この一時利益を除くと、来年はさすがに利益反落でしょうか?
ソリアノグループ
ソリアノグループ(ソリアノ財閥)は19世紀に移民してきたスペイン系移民にツールがあります。アヤラとは親戚関係にあります。
アンドレス・ソリアノ(Andrés Soriano, 1898-1964)は、フィリピンの国民的ビール、サンミゲルビールの創始者の一人です。
また、A. Soriano Corporation(この記事で取り上げてる持株会社)を作り、様々な事業に投資してきました。1941年にフィリピン航空を創業しました。その他上場会社では、過去Atlas Consolidated MiningやInternational Container Terminal Services, Inc.にも投資していました。金融業に投資しており、私が使っているAB Capital証券を作ったのもソリアノのようです(Anscor Financeとして1980年に設立)
現在は、アンドレス・ソリアノ(1世)の孫のアンドレス・ソリアノ3世がグループトップです。
参考
- 会社Webサイト – History & Backgroud
- Wikipedia – Andrés Soriano
- リサールの山小屋から ソリアノ家 (2010/6)
- フィリピンの財閥と有力層 (2008/1)
- AB Capital – History
資本関係は不明ですが、ソリアノファミリーオフィスというWebサイトがありました。こちらは、ブロックチェーンやロボットなど今どき?な事業に投資しているようです。
Webサイト https://www.sorianogroup.com/
バリュエーション
2022年の年次レポートによると、EPSは2.28、BPSは17.89です。現在の株価10.24ペソで計算すると、PER4.5倍、PBR0.57倍となります。
配当は0.5ペソだと配当利回り4.9%です、昨年のように1.0ペソ出すと9.7%となります。
この数字だけみると割安に見えますが、2022年は株売却の一時利益が大きかったので、来年以降この水準のEPSや配当は維持できないように思えます(2021年もけっこうな水準だったのは?未調査)。

時価総額
時価総額は250億ペソ(2023/3/31時点)で、中小型株です。
セクターが持ち株会社の銘柄を時価総額順にならべた表が以下です。COSCOとLPZの間ぐらいの時価総額です。

(補足、TODO: COSCOとANSを比較したとき、時価総額、収入、PERの関係が変。”PER=株価÷EPS”だが、”時価総額÷利益”でも本来同じ値になるはず。一因は収入にIncome/(Loss) Before Taxの値を使っているからぽい。PERを計算する場合は税引き後を使う。株価も前日終値の値を引っ張ってきてることに気づいた・・・データは規模感の比較程度に)
資本構成
POR(Public Ownership Report)を見ると、会長のアンドレ三世が20%、Anscor Consolidated Corporationが50%の株を保有しています。

Anscor Consolidated CorporationはANSが100%の株を保有する完全子会社で、アンドレス3世会長が同じく会長を務めている会社です。100%子会社に50%の株を持たしていることになります。持ち合い関係が強すぎて誰も入り込めない感じですね。

株価推移
株価チャートを見ると、堅調な推移をしています。最近軟調な株価の中で新高値を更新している数少ない銘柄の一つでもあります。

ただ、どういう材料、ファンダメンタルの強さがあって新高値を更新しているのか、ちょっと調べたたけではよくわかりませんでした。
まとめ
以上、ANSについて調べてみました。
ソリアノ財閥はアヤラ同様スペイン系の財閥で、サンミゲル、フィリピン航空などフィリピンを代表する企業を創業、育ててきたようです。現在、株式市場での存在感は小さいですが、この株価上昇には何か背景があるのか気になっています。
その他メモ。1990年代に兄弟の間で内紛があり、弟(Carlos)は追放されて落着したようです。有料記事は読めず、詳細不明(参考 1 2 3)。
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