開示資料の一つ、上位100位株主リスト(List of Top 100 Stockholders)と、そのリストの中のPCD Nominee Corporationという株主について調べてみました。
ポイント
- 上場企業は四半期ごとに株主リスト(上位100位)を開示することになっている
- 株主の中の PCD Nominee Corporation という会社は電子株券の書き換えを管理する会社で、この名前でおまとめされてしまっている
上位100位株主リスト
フィリピンの上場会社は四半期ごとに株主の上位100名のリストを開示することになっています。
この株主リストはPSE EDGEで閲覧することができます。会社の開示情報の”List of Top 100 Stockholders”というのが株主リストです。
次のようなポップアップ画面が表示されます。AttachmentからPDFファイルを選び、Downloadボタンを押すと、ファイル本体をダウンロードできます。
なお、Reference: Section 17.12 of the Revised Disclosure Rules がこの開示のルールについての参照先です。四半期末日から15日以内に、このリストを提出することになっています。また株主リストには少なくとも証券会社や信託会社の名前を表示しなければならず、 PCD Nominee Corporation(後述)全体の株券だけ載せてもダメということが書かれています。
SECTION 17.12. Submission of List of Top 100 Stockholders – All
listed companies shall submit to the Exchange a list of their top one hundred
(100) stockholders on a quarterly basis. The list shall be submitted to the
Disclosure Department within fifteen (15) days after the end of each quarter.In the submission of the List of Top 100 stockholders, listed companies
PSE Revised Disclosure Rules Section 17.12
must furnish the Exchange the names of the broker, dealer, investment house,
voting trustee, bank, association, or other entity that exercises fiduciary power in
nominee name or otherwise. “PCD Nominee Corporation” will not anymore be
accepted by the Exchange as a valid entry in the list. For this purpose, the PCD
shall be requested to furnish the list of PCD Participants to the concerned Issuers
to enable them to comply with the foregoing requirement.
ダウンロードしたPDFファイルを見てみると、上位100位までの株主がリストされています。この中でPCD NOMINIEE CORP (PCD Nominee Corporation)という株主名があります。
PCD NOMINEE Corporationは、フィリピンで電子株券の管理、名義書き換え処理を一括して行っている機関です。日本で言うところのほふり(証券保管振替機構=Japan Securities Depository Center)に相当するものです(たぶん)。
PCD Nominee Corporation is the legal entity that is used to facilitate trading in the Philippine Stock Exchange. It is also used to distinguish kung sino yung foreign investors sa domestic investors.
CNN Philippines Twitterより。ABS-CBNの人が国会に呼ばれて説明したとき？の発言
株券の処理をスムーズに行うための機関で、また、外国人かローカル(フィリピン人)の区別を明確にしています。上のPCD NOMINEE Corp – NON Filipinoが外国人、PCD NOMINEE – FILIPINOがフィリピン人の株券の合計となっています。
PCD NOMINEE Corporation 保有分内訳
大多数の人の株券が PCD NOMINEE Corp にまとめられていて、これでは株主リストの意味がないです(誰が何株持っているかさっぱりわからない)。が、PDFファイルの後ろの方にこのPCD NOMINEE CORPに預けられている株券の内訳がリストされています。
ただし、内訳といっても、どの”証券会社(や信託会社など)が何株もっている”しか書いてないので、結局のところあまり細かいところはわかりません・・・
例えば、私がABキャピタル証券で買うと、このPCD Nominee Corporation名義でジョリビーの株主リストにのり、内訳でABキャピタル証券の株数が増えることになります。個人の名前が出ないのは安心ですが、100位リストにのって名前を示したい(誰に？)ということはできないようです。参考↓
PCD Nominee Corporation の売買手口
あまり細かいところまで分からないPCD Nominee Corporation内訳ですが、この内訳を売買判断に利用するというアイデアがあります。
フィリピンでは国民(全員の)年金は存在しませんが、50人以上の事業者が加入する企業年金、SSS(Social Security System)、公務員年金のGSIS(Government Service Insurance System)という年金基金があります(参考 フィリピン共和国の年金制度について )。
SSSとGSISは大きな資金を運用しており、株価の大きな需給要因の一つになる、また比較的足の長い資金(頻繁に売ったり買ったりの判断を変えず一貫している)なので、３カ月に１回の PCD Nomineeのリストでも、あー買い続けてるなー(売り続けてるなー)というのがわかりやすいです。
昨年コロナショックで株価が急落したところでは、政府が年金さん助けて！って買い支持を出し、実際大幅買いを行い、株価リカバリーの一つの要因になったようです。
上のツイートに興味をもって、アヤラ(AC)の直近４回の株主リスト(PCD Nominee内訳)をチェックしてみたのですが、GSIS、SSSは一貫して買い続けているがわかります。
ただし、アヤラぐらいの大型株になると、GSIS、SSSの売買代金の割合はそれほど大きくない感じ(上の表でもドイツ銀行やスタンダードチャーターなどの売買の方が圧倒的に大きい)で、株価にどれほどのインパクトがあったのがはよくわからないところです。
なお、株券リストは四半期に一回しか見れないので、長期の手口チェックにしか使えませんが、AB Capital Advantageなど証券会社のツールで日ベースで証券会社ごとの買いと売りの手口がわかるので、四半期の株券リストと合わせて何かしら売買判断に使えるかもしれません。
ただ、私が見ても、どの証券会社がどういう特徴があるのか、背後の実際に注文を出している人が想像つかないので、何かしら役に立つ判断ができる気はしません。
その他参考
以上、株主リストとPCD Nominee Corporationについて調べてみました。
なお、この上位100人の株主リストを見てもPCD Nominee Corporationに阻まれて実際誰の名義の株なのかはっきりしません。また、100位リストに載っている大株主でも、個人名以外にも親族の支配している複数の法人を株主にしている場合が多く、上位100位のリストを見ても、実際誰が何パーセント会社を支配している(議決権をもっている)のかはっきりしません。議決権の割合を確認するにはこの上位100人株主リストでなく、 Public Ownership Reportという開示資料に明記されています。このあたりは、後日また調べたいと思います。
アイキャッチ画像はネットは広大だわでぐぐって拾ってきたものです。SSS、GSISの略語つながりで拾ってきましたが、GSISじゃなくてGISですね(まぁ味気ない株主リスト画像じゃ何なのでひろってきただけなので、何でもいいでしょう)。
↓参考(ちゃんと見てないけど、じっくり読むとPCDって何とかよくわかりそうな)
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