通信セクター

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最近けっこうな勢いで株価が上昇している通信セクターの銘柄について調べてみました。フィリピン株の主な通信セクター銘柄には以下のものがあります(ConvergeとDITOはPSEのセクター分類はInformation Technologyですが)。

ロゴ会社名(ティッカー名)、セクター、補足
Globe Telecom, Inc. (GLO)
セクター: Services / Telecommunications
大株主はアヤラ(30%)、シンガポールテレコム(47%)
傘下にGCashのフィンテック企業Mynt(Antグループが出資)
PLDT Inc. (TEL)
セクター: Services / Telecommunications
大株主はメトロパシフィック (25%)、JGサミット (11%)、NTTグループ(20%)
会長はメトロパシフィックグループのManuel V. Pangilinan氏
傘下にPayMayaのフィンテック企業Voyager(テンセントが出資)
Converge Information and Communications Technology Solutions, Inc. (CNVRG)
セクター: Services / Information Technology
新規参入の有線ブロードバンド通信の会社
2021年9月上場でそこから株価は1年で2倍以上になり、PSEiにも早期採用され、2021年のフィリピン株を代表する銘柄の一つ。創業者CEOのデニス・ウイ氏はパンパンガ出身
DITO CME Holdings Corp. (DITO)
セクター: Services / Information Technology
新規参入のモバイル通信の会社
会長でCEOのデニス・ウイ氏はダバオ出身。同郷のドゥテルテ大統領の友人。
チャイナ・テレコムが40%出資し資本は万全。GLOBE、PLDTと違い、外国人持ち株比率上限は100%?
参考 第3の通信会社がサービス開始 中国と合弁

モバイル通信(電話およびインターネット)の銘柄はPLDT、Globe、DITOの3社です。

固定インターネットの銘柄はPLDT、Globe、Convergeの3社です。フィリピンのブロードバンド普及率は未だ低く成長余地が大きいです。

最近、通信セクターの株価が好調な理由は、以下のことが考えられます。

  • 通信セクターはコロナ禍で影響を受けず、業績が順調なこと
  • GlobeやPLDTについては子会社で展開する電子マネーのサービスが急拡大していること
  • 現在40%の外国人持ち株比率上限の規制を緩和する動き

モバイル

フィリピンの携帯電話サービス(電話およびインターネット)を提供している会社は、Smart、Globe、DITOです。SmartはPLDTの子会社です。以前はSmartとGlobeの2強でしたが、最近DITOが参入し急速にシェアを伸ばしています。

フィリピンは国民の一人当たり所得は未だ低いですが、携帯電話の普及率はすでに100%を超えています。飽和しているのでDITOはSmartとGlobeのシェアをとっていく戦いになります。

世界情報通信事情 フィリピン

なお100%超と言っても、すべての国民がスマフォを持っているわけではなく、インターネットを見れないガラケーや、一人2つ3つ持っている人など含めて平均して100%で、全員にいきわたっているわけではありません。一方、一人当たりのインターネット利用時間は長い(インターネット中毒傾向が高い)らしいです。

電子マネー

フィリピンで有名な電子マネーに、PLDT系のVoygerが運営するPaymayaと、Globe系のMyntが運営するGCashがあります。

電子マネー運営会社

GCashを運営するのはGlobe系のフィンテック企業Mynt
GlobeとAnt(中国のアリババグループの金融会社)のジョイントベンチャー
大株主はGlobe(40%)、Ant(40%)、Bow Wave(13%)、アヤラ(7%)

PayMayaを運営するのはPLDT系のフィンテック企業Voyager
大株主はPLDT(35%?)、テンセント、KKRなど
デジタル銀行(物理的な店舗を持たない銀行)のライセンスを取得(2021/9)
携帯番号を使った小口送金のSmart PadalaもVoyagerのサービス

GCashの方が開始が早く、利用者も多いようです。フィリピンで有名な電子マネーとしては他にもCoins.phなどがあります。

電子マネー市場は日本よりフィリピンの方が利用者が多く、サービスも進んでいます。この背景にはフィリピンでは銀行口座をもっていない人が多いことがあります(一方、携帯電話やスマフォの普及率はそれなりに高い)。

日本では公共料金の支払いやネットで商品を買ったときの代金の支払いは、クレジットカードや銀行振り込みが利用されますが、銀行口座をもっていない(≒クレジットカードをもっていない)人が多いフィリピンでは、銀行振り込みやクレカで代金を支払うことができません。代替手段としてGCashやPayMayaなどの電子マネーでの代金支払いに大きな需要があります。

またコンビニ、スーパー、その他の対面での料金の支払いにも電子マネーを利用したQRコード決済などの利用が増えています。電子マネー決済は毎年倍々ゲームで規模拡大しており、コロナ禍でも(リモート、非接触の)電子決済量は急拡大しています。

また、収益化より先行投資優先で莫大な資金が必要ですが、GCashはAnt(アリババ)グループ、PayMayaはテンセントの出資、バックアップを受けて資金は潤沢なようです。

EMIsライセンスとかPesonet、Instapayとか

ググっているときに出てきた用語で混乱したので整理、補足しておきます。

フィリピンの電子マネーはEMIs (Electronic Money Issuers 電子マネー発行者)というライセンスを受けた会社がサービスを提供しています(GCashはMyntの子会社G-Xchange, Inc.がライセンス取得)。

フィリピンのモバイル決済事情 (2019/5/27)より

なお、SquidpayもEMIsライセンスを取得した比較的新しい電子マネーで、Squidpay Technology, Inc.はPSE上場会社のPHAを使って裏口上場を予定しています。

なお、Pesonet、Instapayという名前の電子送金サービスがありますが、これは電子マネーそのものではなくて、電子マネーワレットと銀行の間(あるいは銀行-銀行の間)で素早く電子送金を行うためのフレームワーク(基盤技術)です。Instapayが送金5万ペソまでで高速、Pesonetは上限なしです。GCashやPayMayaなどの電子ワレット(電子マネーアプリ)から PesonetかInstapayを利用するという関係らしいです。参考 Bank Transfers with GCash

固定インターネット

固定インターネット(有線ブロードバンド)サービスを提供している主な会社は、PLDT、Globe、Convergeです。長らくPLDTとGLOBEの2強でしたが、Convergeが新規参入し、シェアを拡大しています。

モバイルインターネットは普及率では飽和気味ですが、固定インターネット回線の普及率は未だ低く(2019年時点で5%程度)で、大きく伸びる余地があります。

世界情報通信事情 フィリピン

World Bank – Fixed Broadband Internet Subscribers (per 100 People)

上記3社のシェアが大きいですが、それ以外でも、ABS-CBN傘下のSky Cable、マニラ電力傘下のRadiusなども固定インターネットサービスを提供しています。

固定電話

固定電話では、PLDTが最大のシェアを持つ寡占市場になっています。DigitelはPLDTに、BayanTelはGlobeが買収して傘下になっています。

フィリピンでの固定電話は大手4社のPLDT、Digitel、Globe、BayanTelが電話回線を保有していますが多くの人がPLDTに加入しています。各社のウェブサイトなどでどの会社のプランがあなたのニーズに合っているのかを確認しましょう。加入手続きについては、オンラインでもできますが自ら最寄りのビジネスオフィスに行ったほうが早く手続きができます。

フィリピンプライマー – 電話

その他参考

以下は通信セクター銘柄の時価総額やバリュエーションです。上記銘柄以外にNOWとTBGIも入れておきました。NOWはB2Bの無線サービス、TBGIは衛星通信を利用したサービスを提供しているらしいです(よく調べてなくて今一つ事業内容は謎)。

外国人持ち株比率上限

外国人持ち株比率(Foreign Ownership Limit)を見るとDITOは100%になってます。ちょっとぐぐった限りでは2020年にHouse Bill No.78が承認されてうんたらかんたらみたいな流れがあるようです(ややこしそうなので保留)。

一方、GlobeやPLDTは外国人出資比率40%制限のままです。40%超えてるのに優先株をこねくりまわして40%未満と言い張ってるのはケシカラン的な話で昔もめてもいました。

Is the Supreme Court afraid of Indonesian-owned PLDT and Singaporean Globe? (2016/1/21)

通信を含む公共事業の会社は外国人も持ち分比率は40%までとフィリピンの憲法で定められているのですが、これを修正しようという動きがあるようです。

FEF: Exclude telcos as public utilities (2021/8/1)

DITOとConvergeのCEOが同姓同名デニス・ウイ

Convergeの創業者CEOのDennis Anthony H. Uy氏と DITOの会長でCEOもDennis A. Uy氏が偶然にも同様の業種の会社のCEOで同じDennis Uyという名前(ミドルネームは異なる)ですが、特につながりはないそうです。ConvergeのCEOはパンパンガ出身、DITOのCEOはダバオ出身で同じダバオ出身のドゥテルテ大統領とも親しいらしいです(2016年の大統領選挙では多額の寄付を行った)。

FBの誰かの作った比較画像

He’s Not Related to the Other Dennis Uy

The probability of having two people, CEOs and business founders no less, in the same industry with the same name is slim. Contrary to popular belief, the two are not related, with one being Davao-born and bred and the other hailing from Pampanga after immigrating from China.

The Other Dennis Uy: Who Is Dennis Anthony Uy, CEO of Converge?

ダバオのデニスウイ氏は他のPSE上場企業ではPHRやPNXの取締役にも名前があります。

以上、フィリピンの通信セクター銘柄について調べてみました。コロナ耐性があり、流行りのフィンテックがらみだったり、ブロードバンド通信も成長余地相当あったり、有望なセクターのようです。

参考

コメント

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