REIT

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フィリピンのREIT銘柄についてざっと調べてみました。

フィリピンREIT

わりと最近

フィリピンのREITは2020年8月上場のアヤラのAREITが第一号で、わりと最近始まりました。結構前からREIT上場は許可されていたのですが、条件が厳しくて誰も使わなかったのが、最近条件が緩和されたことで続々上場されているようです。

フィリピンでは、2009年にREIT法(RA9856)、2010年にREIT法細則(IRR)がそれぞれ成立し、REIT市場の創設が可能となった。しかし、IRRの規定にある浮動株比率の要件が厳しく、REITを上場させる動きは見られなかった。2020年1月、REIT関連法の改正で浮動株比率の引き下げや付加価値税の免除、エスクロー要件の撤廃などが盛り込まれたことを受け、大手不動産デベロッパーの間でREIT上場の機運が高まった。同年2月にAyala Landが証券取引委員会(SEC)にREITの目論見書を提出、8月にフィリピン証券取引所に第1号REITとしてAREITを上場させた。

海外REIT市場の最新動向(アジア、新興国・地域) (2021/9/7)

フィリピンREITの発展を妨げる要因

(1) 不動産をREITに移管する際のVAT課税
(2) ミニマム・パブリック・オーナーシップ(MPO、最小浮動株比率)要件
(3) エスクロー要件

フィリピンのREIT規模と市場 (2018/7/16)

REITの税金メリット

REITは不動産投資を促進させるための仕組みで、税金面で優遇されています。

REITは利益の9割以上を分配金にまわすことを条件に法人税が減免されます。

さらに投資家が受け取る配当の税金が10%になっています。日本からフィリピン株に投資している場合の配当の税金は通常25%ですが、REITの場合はそれが10%になります。分配金(配当)利回りの大きなREITにとってこれはかなり大きなメリットです。

開示がちゃんとしてる

REITは開示がしっかりしています。投資計画、四半期ごとの投資家向け資料などの資料を作って開示しないといけないことになっているようです。

以下はAREITのファンドマネージャーレポート(決算財務レポートとは別の投資家用レポート的なもの)ですが、物件ごと資産評価売上(賃料収入)空室率などの情報がはっきりと記されていています。

Fund Manager Report 2023 1Q

このようにはっきり開示されているので、仮にスポンサー(REITの大株主、兼REITを運営している会社)がお荷物物件をREITに引き取らせたとしても、外からの投資家の目にさらされてREITの価格に反映されます。

REITがゴミ箱と呼ばれる本当の理由

不動産投資信託(J-REIT)で発生した「利益相反」とは何?

REITの種類

REITは組み入れる物件の種類によって、以下のような特徴があります。現在上場しているフィリピンのREITはオフィスビル中心のものが多いです。

https://kabu.com/kabuyomu/money/508.html

また、上記のような不動産だけでなく、再生可能エネルギー関連の土地や施設に投資するREITも上場されています。

REIT銘柄一覧

以下はPSE上場の不動産セクターの銘柄を時価総額順に並べたもので、黄色でハイライトした銘柄がREITです。

不動産セクターの銘柄一覧(2023/5/12時点)。黄色ハイライトがREIT

時価総額で見ると、RCR(ロビンソン/JGサミット)、AREIT(アヤラ)、MREIT(メガワールド/AGI)の3つのREITが規模が大きいです。

通常の株の場合はPERやPBRでなんとなくのバリュエーション(割安か人気か)が分かるのですが、REITの場合はこれらの尺度がうまく機能していないことがあります。PBR(簿価)よりNAVx(時価)を使った方が、PERより分配金利回りで収益を見た方が適切だと思います。

Merkado Barkada氏のREIT Trackerが参考になります。

以下、各REITの概要です。

AREIT (AREIT, Inc.) アヤラ、オフィス中心

AREITはアヤラグループのREITで、フィリピンで最初に上場されたREITです。スポンサーはALI(アヤラランド)、物件はオフィスが中心となっています。

ポートフォリオ

保有物件一覧は以下です。

Fund Manager Report 2023 1Q

上記に加え以下の物件も組み込まれる予定です。かなり規模拡大し、マカティのGlorietta MallやMarquiee Mallなどリテール(ショッピングモール)の割合も増えることになります。

Fund Manager Report 2023 1Q

テナント

テナント用途の割合では、オフィス69%、リテール12%、ホテル4%、土地15%となっています(土地という分類も何か変ですがほぼ工業用?)。

Fund Manager Report 2023 1Q

上場時は土地は全く保有していませんでしが、ラグーナテクノパークの土地を取得しています。

AREIT acquiring P22.5 billion assets via share swap with Ayala Land (2023/3/9)

フィリピン_アヤラREIT土地取得 (2021/1/15)

土地契約

土地リース料はテナント家賃の数%で、おそらく物件により異なるのだと思いますが、明確な数字や一覧表を見つけれれませんでした。

Definitive Information Statement (2023/3/28)

土地リースコスト262÷家賃収入3807(÷土地なし物件のみ0.85)=約8.1%が平均だと思われます。

17-A (2023/4/17)
17-A (2023/4/17)

DDMPR (DDMP REIT, Inc.) ダブルドラゴン(ジョリビー系)、オフィス中心、POGO比率高

DDMPR(DDMP REIT, Inc)は、ジョリビー系の不動産会社ダブルドラゴン(DD)がスポンサーのREITです。パサイのDD Meridian Parkの土地および3物件を保有しています。他のREITは土地を(全くor 少ししか)もたないREITが多い中、ここは土地も自前で持っているのが特徴です。

オフィス中心のREITでPOGOの比率が特に高いのが特徴です。POGO禁止によるテナント退去で空室率が高くNAVxがかなり低く(不人気銘柄に)なっています。

2021年3月上場で、AREITに続くフィリピン2番目のREITとして上場しました。上場当初はガンガン規模拡大するのが期待されていたようですが、スポンサーも規模拡大せず守りの一手のようです。

参考 [DDMPR] ダブルドラゴンREIT

FILRT (Filinvest REIT Corp.) フィルインベスト、オフィス中心、借り入れ高

FILRTは、フィルインベストメントグループのオフィスREITです。アラバンのオフィスビルが主な保有物件です。

土地やボラカイの物件など、積極的に組み入れ資産を増やしていっています。REITの中でも借り入れが多いのが特徴です。

なお証券シンボルはFREITではなくFILRTなので注意です(Google検索するともしかしてFLIRTと言われてしまう)。

参考 [FILRT] フィルインベストREIT

RCR (RL Commercial REIT, Inc.) JGサミット、オフィス中心

RCRはJGサミットグループのオフィスREITです。RLC(ロビンソンランド)がスポンサーです。

ポートフォリオ

以下が所有物件の一覧です。マニラのPasig中心に各地に物件を保有しています。ほとんどはオフィスビルです。最大の物件はQuezon Cityの Exxa-Zeta Towerです。

Fund Manager Report 2023 1Q

土地については、ビルのみ保有物件が大半ですが、一部土地含む物件があります(Free hold over)。ただしこれらの物件もビル一棟まるごとではなく、部分所有となっています。

土地はほとんどRLC保有ですが、一部Cyber SigmaについてはBCDA(Bases Conversion and Development Authority)からのリースです。(TODO 政府機関?)

会社Webサイトで建物外観や詳細を確認できます。

https://www.rlcommercialreit.com.ph/the-portfolio

テナント

テナントの種別割合は以下のようになっています。

Fund Manager Report 2023 1Q

土地契約

土地リース料はテナント家賃の7%となっています。また、BCDAの土地については50Mペソ固定(毎年3%上昇)となっています。

Definitive Information Statement (2023/4/17)

MREIT (MREIT, Inc.) アライアンスグローバル、オフィス中心

MREITはAGIグループのオフィスREITです。MEG(メガワールド)がスポンサーです。

ポートフォリオ

以下が保有物件の一覧です。Quezon City(Eastwoodモール付近)、Taguig(Venice Grandモール付近)、Iloiloの3か所に複数の物件を保有しています。

Definitive Information Statement (2023/5/12)

テナント

90%がオフィス、3%が他のテナントとなっています。

Definitive Information Statement (2023/5/12)

土地契約

土地リース料は、テナント家賃の2.5%(ホテルは1.5%)となっています。2025年以降は5%(ホテルは3%)と設定されています。地主はMC(メガワールド=MEG)です。

Definitive Information Statement (2023/5/12)

メガワールドREITが誕生!(2021/7/14)

CREIT (Citicore Energy REIT Corp.) メガワイド系、再エネ

CREITは2022年2月上場のREITで、フィリピンで6番目のREIT、再生エネルギー関連のREITとして初のREITです。

他の普通の不動産REITは土地はスポンサーから借りている場合が多いですが、CREITの場合、逆に土地を保有して貸して家賃を得ています。

参考 [CREIT] シティコアREIT

VREIT (VistaREIT, Inc.) ビリヤール、商業施設

VREITはビリヤールグループの商業施設REITです。フィリピンのREITは、オフィス中心REITが多い中、商業施設REITは希少です。

組み入れ物件がやや微妙な感じもしましたが、分配金はちゃんと出ていて(ここまでは)順調?なようです。

参考 [VREIT] ビスタREIT

PREIT (Premiere Island Power REIT Corporation) ビリヤール、発電所インフラ(再エネ組み込み予定)

PREITは2022年12月、つい最近上場したビリヤールグループのインフラ関連REITです。セブのカモテスとシキホールの発電所の土地と建物を保有しています。

スポンサーはSIPCOR(S. I. Power Corporation)とCAMPCOR(Camotes Island Power Generation Corporation)です。

時価総額は49億ペソとフィリピンのREITの中では最小です。

ファンドマネージャーレポートで物件ごとの収益などもなし、ホームページは工事中のページもあり、他のREITに比べて情報開示がやや負けてる感じがあります(上場したばかりなのでそのうち改良されていくかもしれません)。

ポートフォリオ

PREITの保有物件は現状、火力発電や関連施設のようです。また、SIPCORのシキホールの土地の一部はPREIT保有でなくSIPCORからの借地です。

Final Reit Plan

IPOで得た資金をもとにバターン、ナガなどの太陽光発電に投資する計画が現在進行中です。

資本関係

ビリヤールグループのインフラ投資会社が、PAVI (Prime Asset Ventures, Inc)で、PREIT、SIPCOR、CAMPCORの資本関係は以下のようになっています。

Final Reit Plan

Webサイト https://pavi.com.ph/

Villar-led PREIT closes higher on its market debut (2022/12/16)

まとめ

以上、フィリピンのREITについて調べてみました。

インカムゲイン狙いの長期投資にREITは悪くない気もします。配当源泉徴収10%というのは個人投資家には大きなメリットです。また、フィリピンの上場企業は情報開示がやる気のない会社も多いですが、REITは情報開示がしっかりしています。

まだフィリピンのREITははじまったばかりですが、SMグループのREITも上場を計画しているらしく、今後さらに規模が拡大していきそうです。

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