建設セクターとセメント銘柄

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建設セクターの銘柄について調べてみました。

ポイント

  • 主なゼネコン銘柄はMWIDE、EEI
  • 主なセメント銘柄はEAGLE、HLCM、CHP、PHN
  • セメント銘柄は石炭価格の高騰と安価な輸入セメントとの価格競争が懸念

Construction, Infra. & Allied Services

PSEのセクター分類でセクターがIndustrial、サブセクターがConstruction, Infra. & Allied Services(建設、インフラおよび関連サービス)の銘柄を調べてみました。以下が建設セクターの銘柄一覧ですが、セメントの会社が多いです。

建設セクター一覧。サブセクターがConstruction, Infra. & Allied Servicesの銘柄一覧。InfraとInfrastructureの2種類ありますが・・・多分同じでしょう。

建設セクターはドゥテルテ政権のビルド・ビルド・ビルドもあり、フィリピン各地で建設需要は引き続き旺盛です。

セメント需要も高いのですが、セメント業界の懸念点が2点あります。一つは原料として使う石炭価格の高騰です。最近、石炭の値上がりが話題になっており、石炭鉱山のSCCの株価も大幅値上がりしていました。日本でも太平洋セメントが3年ぶりにセメント価格を値上げしたというニュースがありました。

太平洋セメント、3年10カ月ぶり値上げ 石炭・物流高で(2021/10/5)

もう一つは値段の安い輸入海外セメントとの競合の問題です。輸入セメントはフィリピン国内のセメントより15%ほど値段が安く、輸入量は毎年6-7%ほど増加しているようです(全体のシェアは?)。主な輸入元はベトナムで輸入セメントの9割を占めます。セーフガード(一定量を超えると関税増加)があっても、それでも輸入量は増加傾向らしいです。

PH cement firms seek end to importation amid supply surplus (2021/5/16)

セメントの輸入停止、業界要望(2021/5/18)

なお、セメントというの構造的に差別化しづらい商品で、いかに安く確実に届けるかが勝負らしいです。セメント製造は大量に石炭と電気を使うため、電気代の高いフィリピンではコスト的にセメント製造業者は不利なようです。

セメントは製品自体の差別化が難しい商品である。そのために競争はおもに価格と,市場の確保,それを可能とする流通網の確立をめぐり展開される。より安い価格で,より確実に消費者のもとへ商品を届けること,そのための事業システムの構築が競争を決する鍵となる。価格競争で勝つための要件は,より新しい生産施設と高い稼働率である。その理由は,セメント産業がエネルギー高消費型の装置産業であり,新しい生産施設ほどエネルギー効率に優れ,また,稼働率が高いほど製品単位当たりのコストが低くなるためである。さらに,エネルギー・コスト上,生産停止が難しく,また製品が劣化するために,円滑な事業運営のためには市場確保,そのための流通網の開拓・維持が極めて重要である。

セメントの産業特性(セメックスの多国籍企業化とセメント産業の世界的再編) (2002)
セメント産業の特徴と自家発電設備の役割 (2020)

PSE上場会社

時価総額の大きい方から主な建設セクターの銘柄を取り上げていきます。

Eagle Cement Corporation (EAGLE)

イーグルセメントはサンミゲルグループのセメント会社です。2017年にPSE上場して、年々売り上げを伸ばしています。

2017年時点でシェアトップを目指すと言っていました(現在のマーケットシェアはすでに1位?)。

地元紙インクワイラーなどによると、国内セメント業界の生産能力別の順位は、1位ホルシム・フィリピン(HPI)、2位リパブリック・セメント、3位セメックス・ホールディングス・フィリピン(CHP)で、ECCは4位につけている。ECCのラモン・アン会長は上場初日に、「現在14%の市場シェアを20年までに25%に引き上げ、トップメーカーを目指す」との目標を示した。

イーグルセメント上場、20年に業界首位狙う(2017/5/30)

Ramon Ang’s Eagle Cement in race to rise above multinational giants (2017/5/2) 2015年時点のシェア

売上や利益を伸ばしているのに(2020年はさすがに減収でしたが)、株価は2017年のIPO価格15ペソを上回れない動きです。

直近12カ月EPSが1.15(PER13倍)、業績がこのペースを維持できれば(半期EPS0.74を2倍した)通期EPSは1.48(PER10.1倍)となり、成長株でPER10倍ならけっこう安いのではないでしょうか?

Holcim Philippines, Inc. (HLCM)

ホルシム・フィリピンは、ラファージュホルシムグループのセメント会社です。

セメント業界は世界的に再編、グループ化が進んでいて、ラフォージュホルシムは世界3位のセメント会社です。(後述のセメックス・フィリピンはセメックスグループ)

1位 中国建材 11.63%
2位 アンキコンチ 8.04%
3位 ラファージュホルシム 7.73%
4位 ハイデルブルグセメント 6.43%
5位 セメックス 3.99%
6位 ウルトラテック・セメント 1.79%
7位 太平洋セメント 1.78%
8位 サイアムセメント 1.72%
9位 冀東セメント 1.62%
10位 CRセメント 1.59%

LafargeHolcim(ラファージュホルシム)仏セメントメーカーのラファージュとスイスのホルシムが2014年に経営統合をして誕生した世界最大級のセメントメーカーです。旧ラファージュは日本では麻生セメントと提携しています。

Cemex(セメックス)メキシコを本拠にするセメントメジャーの一角です。積極的な買収で世界展開を行っています。

セメント・コンクリート業界の世界市場シェアの分析

長期の株価を見ると、ここ数年はイマイチさえない動きに見えます。直近12カ月EPS 0.51(PER12倍)くらいで、それほど割高でもないですが、売上が伸びてないのでエーグルセメントと比べると見劣りはします。

Investagrams

2019~2020年にイーグルセメントのサンミゲルグループが買収提案をしていましたが、結局買収話はなくなりました。2019年から急騰して全戻ししてるのは、買収話が材料のようです。

競争委、サンミゲルのホルシム買収を精査(2019/09/10)

ホルシム・フィリピン(フィリピン)財閥が買収撤回、急落 (2020/5/12)

Cemex Holdings Philippines, Inc. (CHP)

セメックスフィリピンは、メキシコ系のセメックスグループのセメント会社です。

2016年上場で、IPO価格が11.2ペソでしたが、それ以降の株価をみるとだだ下がりで酷いチャートになっています。売上も伸びていないように見えます。直近12カ月EPSは0.12(PER10倍)となっています。

Investagrams

業績も微妙だったのに加え、大幅な株券印刷で資金調達しているのが投資家からは嫌気されていたようです。配当もゼロですし。

セメックス(フィリピン)大規模増資を警戒 (2019/4/4)

株価はさえませんが、最近複数のインサイダー(取締役やオフィサー)が株を買っています。8人のインサイダー買いが入っている株というのはなかなか見ないと思います。中の人は、こんなの安いやろ!買いや!と思っていると言えます。

simplywal.st 猛烈な(人数の)インサイダー買い

Megawide Construction Corporation (MWIDE)

メガワイドは財閥系でない新興の大手建設会社、ゼネコンです。

フィリピン証券取引所上場の建設大手、メガワイド・コンストラクション
Megawide Construction(MWIDE)はフィリピン国内で住宅用・
商業用建物、空港インフラ、インフラ関連施設、再生可能エネルギー
発電所などの開発・建設に従事しています。

フィリピンの大手建設会社、メガワイド・コンストラクション (2018)
2020プレゼン資料

超長期で見ると大きく成長しているようですが、2017年以降は売上も伸び悩んでいるように見えます。長期チャートで見ると、2016年から上げていますが、2020年に全戻ししてしてしまっています。2020年は赤字、12カ月EPSも赤字で回復途中のようです。

Investagrams

フィリピンのメガワイド・コンストラクションは新興の建設会社だ。セブ島の空港整備などの受注で成長してきた。足元の業績は新型コロナウイルスの影響で落ち込むなか、インフラの運営へと事業領域を広げている。

新興建設、10年で売上高6倍 メガワイド・コンストラクション (2021/3/23)

EEI Corporation (EEI)

EEIはユーチェンコグループの建設会社、ゼネコンです。

Investor’s Briefing

事業を多角化しており、2018年に日本の乳酸菌会社、バイオテックジャパンに出資し子会社化しています。バイオテックはフィリピンでトレー式の紙パック米を販売しています(サトーのごはん的なもの?)。

バイオテック、比でパック米飯工場を新設 (2020/1/28)

先日、eCargaなるトラック運転手と荷物を送りたい人のマッチングアプリの発表がありました。

EEI bares homegrown app to connect shippers, truckers (2021/10/4)

海外展開もしており、サウジアラビアなど中東での建設プロジェクトを担っています。

Overseas Construction

株価は直近は公募増資観測もあってイマイチ冴えません。2019年前までは順調に売り上げが伸びてる感じですが、2020年は赤字で、直近12カ月EPSも赤字で回復途上ですが、半期EPSは0.37、2倍にすると0.74(PER8.77)で割安水準に入りつつあるようにも見えます。

Investagrams

Phinma Corporation (PHN)

フィンマコーポレーションは建設資材メーカーです。屋根資材や壁パネルなどの鉄製品、セメントが主な商品です。建設だけでなく教育事業にも力を入れています。

セメント事業は子会社のPhilCementを通して、Union Cementブランドのセメントを販売しています。アジア危機の後2004年にセメント部門は売却したのですが、2017年にビルド・ビルド・ビルドの流れに乗ろうと再度セメントビジネスに参入しました。

Philcmenetはベトナム(提携先のSong Lam Cement JSC)からの輸入が主な仕入れ先になっています(国内生産との割合は?)。

Philcement eyes Asean market (2020/1/21)

Global Cement – Tag:Phinma

フィンマについては以前、以下の記事にまとめました。なお、フィンマもセメックス同様、インサイダーがたくさん買っています。

銘柄調査 フィンマコーポ

以上、主な建設セクターの銘柄についてまとめてみました。EAGLE、HLCM、CHP、PHNはセメント銘柄で、MWIDEとEEIがゼネコンです。(など上場銘柄ではDMCなども大手ゼネコンです、ただし事業の一部)

今回取り上げた銘柄の一覧。株価以外の数値の単位は億ペソ。EPS、PERは直近12カ月(2020年3Q~2021年2Q)

ゼネコンは2020年に赤字で回復途上、セメント銘柄はすでに回復して業績拡大中です。石炭価格の高騰が気がかりですが、3Qはどうなるでしょうか。

この中で選ぶなら、株の教科書(?)的には売上がのびているのに株価が足踏み状態のEAGLEを買うのが王道な気がします。逆張り好きならインサイダーが猛烈に買っているCHPも面白そうです。

なお、太平洋セメントでもPER7倍PBR0.6とかですし、価格競争にさらされやすいフィリピンのセメント銘柄がPER10倍以上を買われていくのかどうかは不明です。(フィリピン株3カ月の初心者がちょっとぐぐってまとめただけの情報です。投資は自己責任で)

アイキャッチ画像はぐぐって拾ってきた昔のポスターから

参考

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