鉱業セクター

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フィリピンの鉱業セクターの株について調べてみました。

フィリピン株の鉱業セクター特色

ポイント

  • フィリピンは鉱物資源が豊富。特に金とニッケルが注目されている
  • 鉱物協定モラトリアムや露天掘り禁止が撤廃され鉱業セクターには追い風

豊富な鉱物資源

フィリピンは鉱物資源に恵まれた国で、金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの採掘量が多いです。特に金とニッケルは近年注目を浴びています。金は流動性の高い投資商品として、ニッケルはEV(電気自動車)のバッテリー用途での需要拡大が見込まれています。

参考 財務省、ニッケル・金をはじめとする鉱物資源の生産拡大に期待 (2021/8/10)

フィリピンの主要鉱山、精錬所 JOGMEC世界の鉱業の趨勢2021フィリピンーデータ集より

資源価格の高騰

昨年2021年、資源価格が高騰しました(反動で今年2022年は全戻し)。以下はニッケル価格の推移です。

LMEニッケル価格チャート https://tradingeconomics.com/commodity/nickel

ニッケルはインドネシアが世界生産首位ですが、インドネシアは国策として未加工資源の輸出を禁止し、ニッケル鉱石の輸出は2020年から全面禁止になっています。これがニッケル需要ひっ迫の一因となったようです。インドネシアの輸出規制にともない世界生産2位だったフィリピンのニッケルが注目されています。現在、フィリピンのニッケル輸出先は98%は中国向けです。(2021年に暴騰して2022年にほぼ全戻しした理由はニュースをちゃんと追ってなくて私はよく理解していません 汗。2021年は石油やコンテナ船運賃などいろいろなモノの価格が暴騰した年でした)

鉱山株の株価はこの資源価格に大きく左右されます。短期的にも値動きは激しいですが、世界的インフレに伴って長期的には資源価格は上昇傾向なのではと思っています。

環境問題と規制

鉱山事業は環境破壊を引き起こすことがあり、政治による規制もたびたび行われてきました。

2012年の鉱物協定モラトリアムにより、新規鉱山プロジェクトが開始できない状況が続いていましたが、2021年ようやく解除されました。

また2017年、故ロペス前環境天然資源相による露天掘り禁止令により多くの鉱山が操業停止していましたが、これも2021年末に解除されました。

これらの規制解除はフィリピンの鉱業セクターに追い風で、数年前から鉱業セクターの銘柄の株価が上昇しています。株価は政治規制により大きく左右されます。

参考

主な鉱業銘柄

鉱業セクターは、PSEのセクター分類で「Mining and Oil」、サブセクターが「Mining」が鉱業の銘柄です。

サブセクター「Oil」は石油(油田や天然ガスの開発)の銘柄ですが、石油は方は鉱山以上に知らない分野なのでここではスルーしてまた後日調べてみたいと思います。

以下はサブセクターごとに時価総額の高い順に並べたリストです。

PSE鉱業セクター銘柄一覧 10/7引け時点

以下はPSEiインデックスの鉱業セクターの銘柄です。基本的に時価総額の高い銘柄で構成されていますが、ABやCPMは入っていません。

https://www.pse.com.ph/indices-composition/

以下、主な銘柄についてとりあげていきます。

Semirara Mining and Power Corporation (SCC) 石炭

セミララマイニングはDMCグループの鉱業および電力会社です。フィリピン最大の石炭採掘および石炭火力発電を行っている会社です。鉱業セクターで現在唯一PSEiインデックス採用銘柄です。

石炭はCO2削減のため世界的に使うのをやめようという動きで、フィリピンでも新規石炭鉱山や石炭火力発電所の建設は(たしか)停止だったと思うのですが、そうはいっても電気が足りない!まだ使うよねということで売られすぎた反動か大きくもどしています。

SCC 5年チャート Investagramsより

またロシアウクライナ侵攻によりヨーロッパへの天然ガス供給が停止されると、再び石炭需要が急増しているらしいです。

なお、DMCグループの持ち株会社DMCもフィリピンを代表する鉱業会社の一つです。SCCの他に、子会社のDMCI Miningで鉱業事業を行っています。DMCのように持ち株会社の中の一ビジネスとして鉱業を行っている会社もあります。

Nickel Asia Corporation (NIKL) ニッケル

ニッケルアジアはフィリピン最大のニッケル生産(採掘)会社です。株価はニッケル価格と連動してるように見えます。鉱業セクターで、SCCに次ぐ時価総額です。

NIKL 5年チャート

日本の住友金属鉱山が出資しており、資本業務提携しています。HPALという技術を使った精錬所を保有しており、技術的な優位点があります。

EV(電気自動車)バッテリー=リチウムイオン電池にニッケルが使われると言いますが、フィリピンでとれる低品位の酸化鉱はリチウム電池向けではありませんでした。この酸化鉱からも高品質のニッケルを精錬する技術がHPALらしいです。

このHPALプロセスは、従来は製錬の対象とならない低品位のニッケル酸化鉱から、ニッケルやコバルトといったメタルを回収できるプロセスで、未利用資源の有効活用という側面からも注目されています。

住友金属鉱山 ニッケルを回収するHPAL技術

JOGMEC 金属資源レポート (2019/7) / tweet 一口にニッケルといっても品質により用途は様々 

Atok-Big Wedge Co., Inc. (AB) 金→天然ガス、再エネ?

アトックビッグウェッジはRoberto V. Ongpin氏の率いる鉱業会社です。もともとは金の採掘会社でしたが、現在は天然ガス油田や再生可能エネルギーのビジネスを模索しているようです。会長、社長、筆頭株主がRoberto V. Ongpin氏となっています。副会長はDITOのデニスウィ氏でウデナグループのバックアップもあるようです。

Atok Gold Mining Co. と Big Wedge Mining Co という2社が合併して今の名前になりました。

以下長期チャートです。

AB 長期チャート

もともと金、副産物の銀を生産する会社でしたが、2010年に石油、ガス、天然資源採掘事業も事業内容に追加しSECが承認(2010年に株価が暴騰していますが、それがらみ?)。

ここ数年の売上はゼロで、鉱山は営業しておらず、他の事業もまだ売上が計上される段階ではない?ようです。売上ゼロですが時価総額は約210ペソ、鉱業セクターで第3位の時価総額の会社になっています。

ググッて見つけたニュースとして、西フィリピン海での中国との石油協同採掘、他風力発電所建設などがありました。

Dennis Uy buys 100 million shares in Roberto Ongpin-led mining firm (2019/7/16)

Dennis Uy, MVP eyeing oil exploration opportunities in West Philippine Sea (2020/10/16)

フィリピン、エネ開発で対中接近 新旧財閥が連携競う (2020/11/19)

Atok-Big Wedge moving into renewable energy (2022/8/5)

Wikipedia – Roberto Ongpin

BIZ BUZZ: Ongpin resurgent (2022/5/17)

Philex Mining Corporation (PX) 金、銅

フィレックスマイニングはメトロパシフィックグループの鉱業会社です。金と銅の採掘を行っています。(金生産でフィリピン最大?)

Analysts’ Briefing: Full Year 2021 and 1Q2022 / Company Presentations より

株価は2021年に上げましたが、2020年の最安値付近に下落接近中で冴えない感じです。

PX 5年チャート

同じメトロパシフィックグループの鉱業/石油セクターの上場会社にPXP(PXP Energy Corporation)がありますが、PXPの方は原油や天然資源開発の会社です。PXがPXPの30%の株を保有する親会社という関係になっています。

Atlas Consolidated Mining and Development Corporation (AT) 銅、ニッケル

アトラスマイニング(Atlas Consolidated Mining)はSMとラモスグループの鉱山会社です。

銅とニッケルの採掘を行っています。他に天然資源の開発も行っています。

https://www.atlasmining.com.ph/about-us/our-business

大株主にはSMとラモスグループが並んでいます(ラモスグループはナショナルブックストアを保有する企業グループです)。2011年にSMが主要株主になったらしいです。

Public Ownership Report

株価推移は上のPXと同様な感じで、2021年に上げて、2022年は下落中です。

AT 5年チャート

Global Ferronickel Holdings, Inc. (FNI) ニッケル

グローバルフェルニッケルはNIKL(ニッケルアジア)に次ぐフィリピンで2番目のニッケル生産会社です。

NIKLがPBR2.2倍なのに対してFNIがPBR1.1倍なので、同じニッケル生産会社として2倍ほどNIKLの方が人気とも言えます。

株価推移は以下のような感じです。

FNI 5年チャート

なお、FNIはもともとSoutheast Asia Cement Holdings, Inc.(CMT)というセメント会社でしたが、Platinum Group Metals Corporation(PGMC、現在FNIの子会社)が2014年に裏口上場用に買収して、今のニッケル生産会社のFNIになりました。2012~2014年あたりで株価が急騰、乱高下しているのはたぶんこの買収、裏口上場からみの売買だと思われます。

Comprehensive Corporate Disclosure on Backdoor Listing (2014/10/27)

Holding firm may transform into backdoor listing vehicle (2012/11/19)

その他、ググってると中国関連のニュースが多く、中国との結びつきが強い会社だと思いました。フィリピンのニッケル輸出の9割以上は中国なのでまあ当然ですか。(用途はリチウムイオン電池向けでなくステンレス?)

Global Ferronickel Holdings、中国企業の20%株式取得を目指す

Apex Mining Co., Inc. (APX) 金

アペックスマイニングはラゾングループの金生産会社です。銀、その他様々な金属の生産およびそれにまつわる売買などの事業も行っているらしいですが、主要事業は金の採掘ぽいです。

2022 2Qレポートより

株主を見るとPrime Strategic Holdingが40%の株を保有しています。Prime Strategic Holdingはエンリケ・ラゾン氏率いるインフラ投資持ち株会社(非上場)です。

PORより

参考 Ports tycoon Razon takes over Apex Mining (2022/3/26)

株価推移です。PXやATがほぼ全戻しして2020年の水準にもどってるのに比べて踏みとどまっているようにも見えます。

APX 5年チャート

Century Peak Holdings (CPM) 

センチュリーピークはWilfredo D. Keng氏の率いる鉱業会社です。

セクターはMiningなのですが、いろんな事業を手掛けているようで、何が主力の事業なのか、何を採掘しているのかよくわかりませんでした。会社Webサイトにはセメントやニッケルのプロジェクトが書いてありました。

https://centurypeakmetals.com/about-us/#our-projects

チャートを見ると2019年あたりから値上がりしたあとヨコヨコ、他の資源価格と連動する資源株とは異なる動きです。

CPM 5年チャート

会長、社長、大株主ともWilfredo D. Keng氏で、財閥の資本は入ってない会社のようです。

Information Statement

Keng氏は2010年にフォーブストップ40位に入った有名人で、前ドゥテルテ大統領の友人?

参考 FAST FACTS: Who is Wilfredo Keng?

Lepanto Consolidated Mining Company (LC) 金

レパントはヤッペグループの鉱業会社です。金と銅の混合物を採掘し、中国や香港に販売しています。現在の売上は小さく、毎年赤字のようです。

参考 ヤップグループ(フィリッペ)

同じ鉱業セクターのManila Mining Corporation (MA)もヤッペグループです。

株主でファーストメトロが6.41%、フィレックスマイニングが5.43%保有していて、ファーストメトロ系で合計11.84%保有していることになります(少しずつ増やしてる?)。

年次レポート
LC 5年チャート

Marcventures Holdings, Inc. (MARC) ニッケル、ボーキサイト

マークベンチャーは鉱業会社で、ニッケルやボーキサイト(アルミニウム原石)を採掘しています。

昨年の業績がとてもよく見えるのですが、調べてみた限り2021年2Q(7~9月)の利益がぶっちぎり(EPS0.32ペソ)で年間業績もこの四半期の利益に依存してる感じでした。ニッケルが高いときに上手く売れたとかそういう理由なのでしょうか?昨年はこのぶっちぎりの2Q利益を受けて0.13ペソの配当を出しています。

大株主に20%を保有する Bright Kindle Resources & Investments, Inc.(BKR)がありますが、BKRもPSE上場会社です。Cesar C. Zalamea氏がMARC、BKR両社の会長を務めています。

株価推移をみると、他の資源株に比べて強い(値下がりが少ない)ように見えます。

MARC 5年チャート

まとめ

以上、フィリピンの鉱業株セクターについて調べてみました。銘柄で時価総額で大きなところをいくつか調べてみましたが、PSEiの鉱業セクターインデックスだとBC、LC、MARCなど小粒なところも入っています(そのうち調べてみるか・・)。

このセクターは昨年2021年に盛り上がり、今年は反動で大幅安になっています。短期的に旬は過ぎた感もありますが、世界的なインフレ傾向や、フィリピンの輸出産業の一つとして鉱業セクターへの投資するのも面白いのではないかと思いました。

アイキャッチ画像はフリー素材サイトより。金属ぽい感じで。

参考

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