電力セクター

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1年で株価5倍になったACEN、1カ月で50%株価上昇したAPなどを見て気になって、フィリピン株の電力セクターについて調べてみました。

ポイント

  • 着実に増える電力需要
  • 再生可能エネルギーブーム

フィリピンの電力事情

人口増加、経済発展に伴い電力需要は年々高まっています。2020~2021年こそコロナで一息つきましたが、経済が再開すると再び電力需要は高まっていくでしょう。

なお、フィリピンは東南アジアの中でも電気料金が高いです。補助金がない、盗電などの要因もありますが、石油や天然ガスなど化石燃料の国内生産が少なく輸入に頼っているのが大きな要因です。そのため、世界的な流れでもありますが、国策として特に再生可能エネルギーの導入には力を入れています。

フィリピンは元々化石燃料資源に乏しく、海外から輸入するにも島国であることからコスト高になってしまう背景があるため、エネルギー安全保障、環境、経済の面から再生可能エネルギー導入を積極的に進めてきた。

ASEAN各国のFIT制度比較 その4 (フィリピン)

フィリピンは日本と同じく火山が多く地熱発電量でアメリカについで世界2位となっています。また、日射量が多く太陽光発電の効率は日本の1.5倍だそうです。

一部の再生可能エネルギーには外資規制も緩和され、バイオマス発電(2019年)、地熱発電(2020年)について外資100%出資が認められました。

発電、送電、配電の分離

日本では昔電力会社は発電から配電まで、東京電力、関西電力といった電力会社が一気通貫で行っていましたが、効率化のために分離が行われました(参考 なぜ送配電部門の分社化が必要なのか?)。

フィリピンでも電力のシステムは自由化されおり、 送電、送電、配電が分離されています。 ACENは発電、MERは配電を(主に)行っている会社になります。

電気事業は発電部門と送電部門、配電・小売部門に分割され、発電部門および小売部門には財閥系グループをはじめ多くの民間事業者が参入している。

フィリピン国の電力事情 より

参考 改めてフィリピンの電力事情を整理する  ←発電、送電、配電に分けてわかりやすい解説

電力セクター銘柄

PSEセクター分類で、セクター”Industrial”、サブセクター”Electricity, Energy, Power & Water”が電力セクターの銘柄です(電力以外の水道会社も入ってますが)。またそれ以外のセクターでも電力事業を手掛けている会社がちらほらあります。

電力セクターの銘柄一覧

ここでは、PSEi(フィリピン株式指数)採用で代表的な電力株である、ACEN、AP、MER、FGEN、それとSCCを取り上げて紹介します。

AC Energy Corporation (ACEN)

ACエナジーは、名前にACがついてるのでもわかるように、アヤラグループの発電会社です。この会社の特徴として再生エネルギーの発電比率が高く、またフィリピン国内だけでなく海外でも事業を行っています。国内はまだ半分ぐらいは石油、石炭火力などの非再生可能エネルギーですが、海外は再生エネルギーの比率が100%です。

ACエナジーの海外事業 2020FYプレゼン資料より

株価は1年で5倍になっており、2020年~2021年のフィリピン株の主役と言える銘柄です。

Investagramsより

Aboitiz Power Corporation (AP)

アボイティスパワーは、アボイティスグループの発電会社です。

2021年の業績は好調で、上半期は純利益で前期比2倍超でした。また、1900億ペソを追加投資し、2030年までに再生可能エネルギーの比率を50%まで高めると発表しています(2021/8/2)。

株価は8月半ばから1カ月で1.5倍に上昇しています。(かなり急騰していますが、もう少し長めのチャートで見ると、まだ戻りの途中のようにも見えます)

Investagramsより

なお、アボイティスグループはビサヤ発祥の会社で、ビサヤ、ミンダナオで配電事業も手掛けています。

参考 アボイティスグループ

First Gen Corporation (FGEN)

フェーストジェンは、ロペスグループの発電会社です。天然ガス(火力発電)の割合が多いですが、再生可能エネルギーにも力を入れています。

子会社のEnergy Development Corp. (EDC)は地熱発電を行っています。以前は上場していましたが、浮動株10%ルールに抵触し、自主的な上場廃止を選択しました(2018/11)。

2020 Integrated Reportより

また、First Philippine Holdings Corporation(FPH)はFGENの親会社です。

株価は2021年はやや軟調でしたが、8月末にKKRが追加出資のTOBを発表し少し値段がワープしています。

Investagramsより

アマゾンのジェフベゾスが再生可能エネルギー(など気候変動に関する研究、活動)に1兆円のファンドを立ち上げ投資する(2020/2)と発表しましたが、近年ますます、再生可能エネルギーにはお金が集まりやすくなっているようです。

Manila Electric Company (MER)

マニラ電力は、フィリピン最大の配電会社です。Meralco(メラルコ)という別名、旧会社名でも知られており証券シンボルのMERはMeralcoの頭3文字からきています。

企業グループ的にはメトロパシフィックグループ(45%)とJGサミットグループ(29%)が大株主で、メトロパシフィックグループのマヌエル・V・パンギリナン氏が会長です。

参考 メトロパシフィックグループ

Semirara Mining and Power Corporation (SCC)

上記はすべて、PSEi採用のフィリピン株を代表する銘柄で、PSEのセクター分類でサブセクターが”Electricity, Energy, Power & Water”の銘柄です。それ以外のセクターでも発電事業を行っている会社があります(持ち株会社でも発電事業を行っている会社がちらほら)。

DMCグループ(コンスンヒグループ)のセミララマイニングは、石炭の採掘を行っている会社ですが、同時に石炭火力発電も行っており、2020年には492MWの電力供給を行っています。

石炭火力はLNG火力に比べ2倍のCO2を排出するといわれ、CO2排出量の視点では一番のやり玉に挙げられる化石燃料で、現在新規発電所の建設は認められなくなっています。とはいっても、石油に比べ安価で、増加する電力需要を賄うため、石炭は未だ重要な電力源の一つではあります。

フィリピンの再生可能エネルギー産業政策

参考 コンスンヒグループ

余談ですが、フィリピンは東南アジアではじめて原子力発電所が建設されるはずでした。マルコス政権の下、完成はされたのですが、多くの欠陥や、汚職の温床が批判され、マルコス失脚後に計画は白紙になりました。電力不足を背景に再稼働に向けた調査が行われる(2016年)という話もありましたが、その後進展はないようです。結局稼働していないため、防護服なしで間近まで接近して見学できる特殊観光スポットになっているそうです。

アイキャッチ画像はフィリピン初の風力発電バンギ・ウィンド・ファームより

その他、参考

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