フィリピンの株の不動産セクターについて、簡単にまとめてみました。
フィリピン株の不動産セクター特色
長期的には、人口増加&経済発展で、土地の値段も上昇していく、不動産ビジネスは拡大という流れだと思いますが、短期的には目先コロナの影響があります。
分野とコロナの影響
不動産ビジネスをセグメント分類すると、オフィス、住宅、リテール、ホテル、工業/物流 といった分野に分類できます。(○△×はコロナの影響)
- ○オフィス:堅調、BPOが牽引
- △住宅(レジテンシャル):戸建て住宅、コンドミニアムなど。工事遅れなどあったが、現在は回復傾向
- ×ホテル(ホスピタリティ):観光産業はコロナで売上大幅減。先行き不透明
- ×リテール:ショッピングモールなど。閉鎖、入場制限で売上大幅減。回復に1年以上かかるか?
- ○工業/物流:倉庫など。たぶん堅調
参考
会社によって、どのセグメントのビジネスを行っているかが異なります。以下は総合不動産のSMプライムの例です。2020年は主力のモールの売上が半減、ホテルも売上規模は小さいですが半減しています。
BPOとPOGO
オフィス部門についてですが、テナントへのリースで家賃収入をもらうというビジネスですが(販売でなく賃貸の場合)、フィリピンの場合BPOとPOGOのテナントが多いのが特徴です。
フィリピンは英語が公用語で人件費が安いため、インドとならび英語圏の国のBPO(Business Process Outsourcing ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業としての利用が活発です。
POGO (Philippine Offshore Gaming Operator) とは海外の外国人向け(ほぼ中国人向け)のオンラインカジノの事業者のことです。数年前までPOGO向けのオフィスリース需要がにぎわっていたのですが、フィリピン政府の規制(免許を与えない、新たな課税)で、近年はPOGO需要はかなり減退しています。
POGOとは、Philippine Offshore Gaming Operatorの略で、複数ではPOGOsと書かれます。これは、オンラインのギャンブルサービスをフィリピン人以外の外国人に提供する企業のことです。ポーカー、ブラックジャック、ルーレットなどが、バーチャルのディーラーを通しておこなわれます。このバーチャルのディーラーの舞台裏にいるテクニカルチームがPOGOを構成しています。
フィリピンの不動産業界を支えるPOGO
POGOテナントは減少、BPOテナントのオフィス需要は引き続き堅調のようです。
REITブーム
2021年8月のAREIT(アヤラ)を初に、DDMPR(ダブルドラゴン)、FILRT(フィルインベスト)、RCR(ロビンソン)と今年は大手不動産デベロッパーのREIT上場が相次ぎました。スポンサーにとってREITは物件売却の出口として使いやすい仕組みだと思います。
主な不動産銘柄
PSEのセクター分類でProperty(サブセクター分類もProperty)が不動産が本業の会社です。以下はセクターがPropertyの銘柄を一覧、売上高の大きい順に並べたもので、40社ほどあります。
この他にも持ち株会社などで事業の一部で不動産ビジネスを行っている会社もたくさんあります。売上高上位の主な不動産銘柄について簡単にとりあげていきます。
Ayala Land, Inc. (ALI)
アヤラランドはアヤラグループ(親会社がアヤラ・コーポレーション、AC)の不動産会社で、フィリピン最大級の不動産デベロッパーです。マニラのマカティやBGCの開発を手掛けたのがアヤラランドです。社名と同じショッピングモールのアヤラ・ランドの運営も行っています。
以下はアヤラランドの売上構成ですが、住宅(販売)の内訳が大きいようです。
フィリピンの首都マニラの首都圏(メトロマニラ)にあるマカティのCBD(中心業務地区)は、アヤラランドによって開発された地区といっても過言ではなく、アヤラランドを代表する大規模都市開発事業となっています。…
アヤラランドは高級住宅から低価格の住宅まで、幅広いターゲット層に合わせるため、5つのブランド、「Ayala Land Premier(アヤラランド・プレミア)」「Alveo(アルべオ)」「Avida(アビダ)」「Amaia(アマイヤ)」「Bella Vita(ベラビタ)」を展開し、それぞれがアヤラランドの完全子会社として企業活動をしています。
フィリペディア – アヤラランド
SM Prime Holdings, Inc. (SMPH)
SMプライムはSMグループの不動産会社(親会社がSMインベストメント、SM)で、アヤラランドと並ぶ、フィリピン最大級の不動産デベロッパーです。ショッピングモールのSMモールの運営も行っています。
SMモールの売上の割合が大きいようです(2020はコロナで大幅ダウンですが、2019年など平年では売上の半分がモール)。
持ち株会社SMの下に、SMリテール(非上場)という会社もあり、同じSMモールでビジネスをしているSMプライムとSMリテールの関係が私には長らくモヤモヤ謎だったのですが、
SMモール全体の不動産事業(モールの管理、テナントに場所をリースして家賃収入)を行っているのが、SMプライムで、SMスーパーマーケットやSMデパートなどの店舗で実際にモノを売ってるのが小売り業のSMリテールということのようです。(常識?)
↓SMプライムのビジネス
SM プライムは…. SM グループの商業ショッピングセンターの開発、運営、またショッピングモール内の商業スペースの賃貸契約等を担っています。企業は拡大し不動産開発会社の最大手となりフィリピンの上場企業に。2007年には企業は世界最大手のショッピングモールチェーンの一つとなり不動の地位を築き上げました。企業はモールやフードコートの賃貸所得、映画チケットの売上や、アミューズメント施設から主に収入を得ています。
プロパティアクセス - SM プライム
↓SMリテールのビジネス
Megaworld Corporation (MEG)
メガワールドはアライアンスグローバルグループの不動産デベロッパーです(親会社がアライアンスグローバル、AGI)。
コンドミニアムおよびBPOオフィスの 開発、販売、運営を行っています。PSE上場の子会社で住宅&リゾート開発のGERI(Global-Estate Resorts, Inc)、小規模住宅開発のELI(Empire East Land Holdings, Inc)があります。
参考 AGIグループ
オフィス部門については、POGOが少なくBPOテナントが多いので、POGO規制による売り上げの落ち込みは少なかったようです。
「メガワールド」のテナントの約80~85%はBPOで、約10%がPOGOS(オンラインカジノ)、残りは従来型のオフィスです。つまり、POGOよりもBPOに重きを置いているということです。実際、BPOやコールセンタービジネスは、DX関連銘柄ともいえ、今回のパンデミックに対して非常に強い耐性を持っているように見えます。
財閥銘柄に注目!「フィリピン株式」コロナ禍で狙うべきは? より
Vista Land & Lifescapes, Inc. (VLL)
ビスタランド&ライフスケープは、ビリヤールグループの不動産デベロッパーです。
住宅建設最大手で、住宅の建設、販売が主なビジネスです。また上場子会社のVistamall(STR)はBPO向けオフィスリースとショッピングモールを運営しています。
参考 ビリヤールグループ
売上高上位の大手不動産会社では目立って割安、裏返すと人気がないのはなぜ?住宅中心で面白みにかけるとか、財務状態があまりよくないとか?(MEG、FLIもPBR低く、同じくらいの不人気銘柄か)。カビテの開発を行っているので、タール火山噴火などの影響も?
物件の品質の評判はあまりよくないという記事も
「政治家の家系が所有している開発会社です。現在はモール中心にビジネスを広げています。郊外の案件が多いです。都心では、唯一マカティにコンドミニアムがありますが、素材があまりよくありません」
不動産「デベロッパー」最新格付けランキング
Robinsons Land Corporation (RLC)
ロビンソンランドは、JGサミットグループの総合不動産会社です(親会社はJGサミット、JGSです)。ロビンソンモールの運営も行っています。
ポートフォリオ的にはSMプライムと似ている感じです。2020年はモールの売上が大きく落ち込んでいます。
なお、ロビンソンモール内のスーパーや直営店舗を含むJGサミットグループの小売りビジネスは上場会社ロビンソンリテール(RRHI)が担当しています。
Filinvest Land, Inc. (FLI)
フィルインベストランドはフィルインベスト(ゴティアヌン)グループの不動産会社です(親会社はフィルインベストメントディベロップメント、FDCです)。
参考 フィルインベストグループ
住宅開発が主力のようで、アラバンのフェスティバルモール、周辺のオフィスの運営も行っています。
「フィルインベスト」は戸建開発を主体としている不動産会社であり、自社のお膝元であるアラバンでモール&オフィスビルも少し手掛けているというイメージがあります。
フィリピン不動産投資のススメ
住宅、オフィス、モールなどに分けたセグメントレポートは見つけられなかったのですが、会社資料によると、Real Estate(不動産開発、コンドミニアムやオフィスの開発、販売)が大きく、Rental(賃貸、商業不動産のリース、フェスティバルモールの運営)の売り上げもそこそこある感じです。
DoubleDragon Properties Corp. (DD)
ダブルドラゴンは、ジョリビー創業者トニー・タン氏とマンイナサル創業者エドガー・シア氏が共同経営する不動産会社です。
リテール(シティモール)、オフィス(メリディアンパーク、ジョリビータワーなど)、工業(セントラルハブ)、ホテル(ホテル101など)と4つの主要事業があります。売上割合では現在、リテールとオフィスの割合が大きいです。
参考 ジョリビーグループ
↓オルティガスのジョリビータワー
8990 Holdings, Inc. (HOUSE)
売上上位の会社でもう一つ調べてみようと思ったのですが、会社Webサイトがウィルスソフトの警告で開けない・・・また後日調べてみよう
以前は、IT系の会社だったらしいですが、現在は住宅開発を行っているようです。
8990 Holdings, Inc. (8990ホールディングス)は、2012年に情報技術および電気通信事業を処分し、企業再編に伴い、子会社を通じて低コストの大量住宅開発業者として事業を行っています。
2013年12月31日現在、8990ホールディングスはDECA Homes(ディーイーシーエー ホームズ)およびUrban DECA Homes(アーバン ディーイーシーエー ホームズ)ブランドの下に約14,000の住宅ユニットを含む16の大量住宅プロジェクトを完了しました。
プロパティーアクセス
以上、フィリピン株の不動産セクターの上場会社について調べてみました。アイキャッチ画像はBPOの記事より
その他参考
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