SMグループ

企業グループ

SMグループについて調べてみました。

SMグループは中国系移民のヘンリー・シー氏が一代で築き上げたフィリピン最大の(時価総額の)企業グループです。SMモール、BDOユニバンクなどを傘下に持ちます。

SMグループの子会社、関連会社一覧を知るには、ASEAN企業地図(書籍)が分かりやすくオススメです。この記事では、自分の理解のためにSMグループについてまとめてみました。

ポイント

  • 主要事業:小売り、不動産、銀行
  • 上場会社:SM(持ち株会社)、SMPH(不動産)、BDO(銀行)、CHIB(銀行)
  • 上場会社2、投資先:AT(鉱山)、BEL(カジノ、不動産)、APC、PLC、LOTO
  • Shoe Martという靴屋が創業事業でSMという名前の由来

創業者 ヘンリー・シー

ヘンリー・シー氏(Henry Sy, 1924-2019)は中国福建省廈門で生まれました。父親はマニラで小さな露店(サリサリ)を営んでおり、ヘンリーは12歳の時に中国から父親を追って、当時英語もタガログ語も話せない状態でマニラにわたってきました。

第2次世界大戦の戦火で父親の露店が焼けてしまい、父親は中国に帰りましたが、ヘンリーはフィリピンに残りました。靴を売るビジネスをチャンスを見出し、アメリカ軍の余剰ブーツを仕入れて売りました。靴ビジネスでいくらかの蓄えを築き、靴屋、ショーマート(Shoe Mart)をオープンしました。後のSMというブランド名はこの創業事業のシューマートから来てます。

後に靴以外の販売を行うデパート、最初のSMモールをキアポに開きました。モールは順調で各地に展開していきました。

ヘンリーはまた、銀行、不動産業にも乗りだし、SMグループというフィリピン一の巨大企業グループを築きました。

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Henry_Sy

ヘンリーシー氏は2019年に94歳で他界しました。現在SMグループの会長は、長年ヘンリーシー氏を長年支えてきたホセ・シオ(Jose Sio)氏(血縁関係はない)、また長女のTeresitaはじめヘンリーシー氏の子供たちが事業を引き継いでいます。

SM プレゼン資料 2023

Henry Sy’s successor is SM’s ‘Uncle’ Jose Sio (2017/5/17)

ポートフォリオ

小売り、銀行、不動産が3つの事業の柱になっています。

  • 小売り:SMリテール(非上場、SMの子会社)
  • 銀行:BDOユニバンク(BDO)、チャイナバンク(CHIB)
  • 不動産:SMプライム(SMPH)

持ち株会社SM(SMインベストメイント)の決算資料を見ると、売上は小売りが大きいですが、利益では銀行の比率が大きいです。

Definitive Information Statement

上記主要ビジネス以外にも、物流、カジノ、エネルギーなど様々なビジネスに投資しています。

SM プレゼン資料 2023

PSE上場会社

以下の会社がSMグループのPSE上場会社です。

SMグループ上場会社一覧 (2023/5末時点)

時価総額トップ3のSM、SMPH、BDOは、PSE全体の時価総額ランキングでも1~3位を占めており、SMグループはフィリピン市場で圧倒的な存在感です(なお、売上高ではSMC、サンミゲルの方が大きい)。

SM (SM Investments Corporation) 持ち株会社

SMインベストメントは、SMグループの持ち株会社です。この会社の決算資料を見ればSMグループ全体の業績が分かります。

SMリテール

SMリテールは、SMグループの主要事業の一つ、小売り事業を行っています。SMインベストメントの子会社で、SMリテール自体は上場していません。(JGサミットグループのロビンソンリテールは上場しているのとは対照的)。以下は主なブランドの一覧です。

プレゼン資料 2022

いくつか気になったブランドをひろってみます。

ファーストリテイリング・フィリピン

フィリピンのユニクロは、日本のファーストリテーリングとSMリテールとの合弁です。出資比率はファーストリテーリングが75%となっています。最近フィリピンどこに行ってもユニクロを見かける気がしますが、1号店は2012年のSMモールオブアジアだったらしいです。なお、ユニクロフィリピンはSMグループとの合弁ですが、別にSMモール内だけにあるわけでもなく、アヤラでもロビンソンでも入ってます。 比ユニクロ、1月末70店でASEAN首位維持 (2023/2/3)

アルファマート (コンビニ)

アルファマートはインドネシアのスンブル・アルファリア・トリジャヤ(IDX: AMRT)が運営するインドネシア最大のコンビニチェーンです。フィリピンのアルファ―マートは2021年に1000店舗でしたが、2023年現在1500店舗を達成したようで、ものすごい勢いで店舗数を増やしています。資金力にモノをいわせて採算度外視で規模拡大している印象です。 アルファマートが1500店目オープン パンガシナン州に初出店(2023/6/19)

ワトソン (ドラッグストア)

ワトソンは香港のハチソングループのドラッグストアです。フィリピンでは2023年に1000店舗を達成したらしいです。

SM sees growth in health, beauty sectors (2023/2/4)

Wikipedia – Watsons

SMPH (SM Prime Holdings, Inc.) 不動産

SMプライムは不動産会社です。モールの利益が大きいのが特徴です。SMモールの土地や建物を保有し、テナントからの家賃が収入となります。2022年末時点でフィリピンに88、中国に7つのモールがあります。ロックダウンが終わりに2022年は前年から大きな伸びになっています。

モールについて住宅(たぶん販売)の利益が大きく、他のオフィス賃貸やホテル事業は少しという構成です。

プレゼン資料2022

参考 不動産セクター

BDO (BDO Unibank, Inc.) 銀行

BDOユニバンクはフィリピン最大の銀行です(2位と3位のMBT、BPIから一兆ペソの資産の差を開けて圧倒的な規模の1位です)。預金、送金から信託運用まで、個人向けから法人向けまで、幅広い銀行サービスを提供しています。

プレゼン資料 2022

ATMの数も(たぶん)圧倒的一位。SMモールに行くとあちこちにBDOのATMが置いています。提携関係なのか?セブンイレブンにもBDOのATMがありますね。

参考 銀行セクター

CHIB (China Banking Corporation) 銀行

チャイナバンクもSMグループの銀行です。総資産で第5位、SMグループの銀行です。

同じSMグループでBDOとチャイナバンク2つの銀行をかかえている理由は私はよく分かってないのですが、顧客や分野が違うのかな?

なお、SMグループ創業者のヘンリーシーがシューマート時代に、100万ペソの大型借入れをしたのがチャイナバンクだったとか。

A special tribute to Henry Sy

2GO (2GO Group, Inc.) 物流、上場廃止

2GOは物流会社です。ウデナグループのデニスウィ氏からSMグループが買収して、最近業績も上向いてきたと思ったら、TOBで上場廃止となりました。

2GO上場廃止へ SMが完全子会社化 (2023/3/8)

AT (Atlas Consolidated Mining and Development Corporation) 鉱山、持ち分34.05%

アトラスはラモスグループの鉱山会社で、銅やニッケルの採掘を行っています。2011年にSMグループが資本参加し、現在34%の株を保有しています。

Public Ownership Report

参考 鉱業セクター

Philippines’ SM buys into Atlas Mining for $142 mln (2011/7/11)

BEL (Belle Corporation) カジノ、持ち分26.6%

ベルは不動産会社で、シティオブドリームズ(カジノリゾート)やタガイタイハイランドなどを運営しています。

以下の上場会社はベルの子会社、関連会社です。

  • PLC (Premium Leisure Corp.):シティオブドリームズ運営?
    • LOTO (Pacific Online Systems Corporation):ロトくじシステム
  • APC (APC Group, Inc.) :発電、資源採掘 参考 電力セクター中堅以降

↓BELの3つの上場子会社

プレゼン資料 2021

参考 BELグループ

その他

以上、SMグループについてまとめてみました。以下その他トリビア。

・マーキュリーの話は都市伝説?:マーキュリードラッグがSMモール内に店舗を出してない理由、ヘンリーシー氏が若いころにマーキュリードラッグの店先で靴を売っていたら、邪険に追い払われたから、という話がありますが、ヘンリー・シー氏自身が語った話ではなく、信憑性は低いようです。 Wikipedia – Mercury DrugSuch a crybaby

・SMのロゴをデザインしたのはセンチュリーパシフィックグループの前身、ポー氏の広告代理店 センチュリーパシフィックグループ

・ヘンリーシー氏とジョン・ゴコウェイ氏(JGサミット創業者)って共通点多い:中国系移民、戦争で親が破産→小さなビジネスからスタート→チャイナバンクから融資→事業拡大→子供6人→かなり長生き

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