サンミゲルグループについて調べてみました。
ポイント
- 主要事業:食品&飲料、発電、石油
- フィリピン企業グループの中で売上高トップ
- PSE上場会社:SMC、TFHI、FB、GSMI、PCOR、BNCOM
- キーパーソン:ラモン・アン(Ramon. S. Ang)、イニゴ・ゾベル(Inigo Zobel) ← ダンディング・コファンコ(Danding Cojuangco、2020没)
- 新マニラ国際空港2027年開港予定
PSE上場会社の資本関係は、アセアン企業地図(書籍)の図が参考になります。
サンミゲルグループとは
サンミゲルグループはサンミゲルビールの醸造からはじまったフィリピン最大級の企業グループです。
代表的なグループ会社は食品&飲料のFB(サンミゲル・フード・アンド・ベバレッジ)、石油のPCOR(ペトロン)などがあります。
持ち株会社はSMC(サンミゲル・コーポレーション)です。2022年の売上高は1兆5千億ペソで、フィリピンの企業グループの中で、売上高はダントツの1位です。(なお、利益や時価総額ではSMグループがトップ)
財閥系複合企業13社、第1四半期は9社が増益・黒字転換 (2023/5/23)
グループを率いているのはラモン・アン(Ramon See Ang)氏で、SMCの会長を務めています。

また、SMCの最大の大株主はTFHI(トップ・フロンティア・インベストメント)で、アヤラ一族のイニゴ・ゾベル氏が保有する投資会社です。
サンミゲルグループの歴史
サンミゲルビールの創業者はスペイン人のドン・エンリケ氏で、1890年マニラのサンミゲルに東南アジア初のビール醸造所を作りました。当時フィリピンはスペインの植民地で、醸造許可をスペイン王から取って、ドイツ人技術者を雇い入れてビールを作りました。創業初期からアヤラ一族が経営に関わっていたらしく、またアヤラの親戚のソリアノ一族も早くから経営に参加しました。
1964年、社名を現在のSan Miguel Corporationに変更し、本社をマカティに移動します。
1970年代から、フェルディナンド・マルコス政権と親しい、エドゥアルド・コファンコ(Eduardo Cojuangco Jr)氏が徐々に株を買い占め買収します。コファンコ氏は、マルコス失脚にともない地位を失いますが、1998年、エストラダ政権時に会長に復帰します。
その後、コファンコ氏は一線を退き、右腕のラモン・アン氏が経営を引き継ぎます。また、コファンコ氏のサンミゲル保有株は、アヤラ一族のトップフロンティアとラモン・アン氏に譲渡、売却されます。
参考
- フィリピンのコングロマリットと多角化戦略 ★
- サンミゲルの軌跡 -ビール醸造所から複合企業へ-
- フィリピン最大の財閥「サン・ミゲル(SMC)グループ」
- Wikipedia – San Miguel Corporation
ポートフォリオ
飲料や食料品のイメージが強いですが、2000年以降、インフラ系事業に大きくシフトさせています。
持ち株会社SMCの年次レポートによると、売上、収益の割合は以下のようになっています。

売上では燃料&石油事業の割合が5割を超えます→PCOR(ペトロン)
一方、利益では食品&飲料の割合が依然大きいです。→FB
インフラ系(石油、発電、インフラ事業)で売上、利益がポートフォリオの半分以上になっています。
インフラ子会社はSMC Infrastructure(非上場)で、鉄道MRT7や高速道路SLEX、Skywayの建設、運営(?)を行っています。発電子会社はSan Miguel Global Power Holdings(非上場)です。
新マニラ国際空港
マニラ郊外、北のブラカンにサンミゲル財閥の威信をかけた巨大空港を建設中です。総工費7350億ペソ(2兆円近く)の巨大プロジェクトで、他に入札に応募する会社がなかったため、サンミゲル単独での受注、完成後50年間空港運営を行うことになっています。
ドゥテルテ政権下で承認され、現在建設中、2027年に開港予定です。一方、ボンボン政権ではクラーク空港+南北高速鉄道の方を優先しており、ブラカン新空港(周辺計画)には逆風?。巨額の資金負担を不安視する向きもあります。
SMC子会社のサンミゲル・エアロシティ(San Miguel Aerocity Inc)が空港建設を管理しています。
Wikipedia – 新マニラ国際空港
New Manila International Airport (NMIA)
PSE上場会社
PSE上場会社には以下があります。

SMC (San Miguel Corporation) 持ち株会社
サンミゲルコーポレーションは、グループの持ち株会社です。FB、GSMI、PCOR、BNCOMなどの上場子会社を傘下にもちます。
FB (San Miguel Food and Beverage, Inc.) 食品、飲料
サンミゲル・フード・アンドベバレッジ、San Miguel Food and Beverage, Inc. (証券シンボル FB)は、食品、飲料事業の会社です。
事業部門は食品事業、飲料、スピリッツの3つの部門に分かれます。

利益では飲料事業が57%と大きいです。この飲料事業の子会社がSan Miguel Brewery(SMB、非上場)です。

Annual Report → 2022
SMBはサンミゲルビールの製造販売している子会社で、日本のキリンが約50%出資しています。以前は上場していたのですが浮動株比率10%ルールを満たせず、2018年に上場廃止になってしまいました。
サンミゲルブルワリー、自主的上場廃止を決定(2018/2/18)
スピリッツ部門の子会社は次のGinebra Sun Miguel, Inc(GSMI)です。
GSMI (Ginebra San Miguel, Inc.) ジン
ヒネブラ・サンミゲル、Ginebra Sun Miguel, Inc(証券シンボル GSMI)は、ジンの製造販売をしています。FBの子会社で、業績は急拡大しています。

参考 お酒銘柄#GSMI
TFHI (Top Frontier Investment Holdings, Inc.) 持ち株会社(SMCの親会社)
トップフロンティア、Top Frontier Investment Holdings, Inc.(証券シンボル TFHI)は、イニゴ・ゾベル(Iñigo U. Zobel)氏が大株主の持ち株会社です。SMCの61.7%を保有しています。
投資会社ですが、SMCの他にはClariden Holdings(非上場)という鉱山会社を保有しているだけで、活発に企業活動を行っている印象を受けません。
TFHIの大株主はイニゴ・ゾベル氏が59.96%、ラモン・アン氏の保有する会社Master Year Limited、Privado Holdings, Corpが計26.03%を保有しています。TFHIの会長はイニゴ・ゾベル氏、CEOはラモン・アン氏が務めています。

イニゴ・ゾベル(Iñigo U. Zobel)氏は、アヤラ一族で、アヤラグループトップのハイメ氏(Jaime Zóbel de Ayala)のいとこで、ボンボン・マルコス大統領の友人でもあります。
Forbes – Inigo Zobel
MarketScreener – Iñigo U. Zobel
マルコス比大統領就任 政権と近い財閥に恩恵 (2022/7/15)
現在、TFHIの現在の時価総額は約380億ペソで、一方TFHIが61.7%を保有するSMCの時価総額2500臆ペソという親子の時価総額が不釣り合いになっています。
2014年上場
なお、TFIHはわりと最近2014年に上場しました。もともとは元貿易産業相のロベルト・オンピン氏傘下の投資会社で、SMCと株式持ち合い(cross-ownership)関係にありました。この持ち合いを解消し、株主構造をシンプルにするために上場させたようです。また通常のIPOでなく”by way of introduction”方式で上場しました。
サンミゲル、コファンコ会長が持株を大量売却 (2012/7/1)
San Miguel streamlines structure, to mete out shares in Top Frontier (2013/10/18)
カンポスファミリー
あと、コファンコ会長がSMCの株を売却した相手で、ラモンアン、イニゴゾベル氏の他に、ジェセリト・カンポス(Joselito Campos)氏もいたそうです。フェルディナンド・マルコス政権と親密で、フィリピン最大の製薬会社、ユニラボの創業者ホセ・カンポス氏の長男です。
Forbes – Campos siblings
Wikipedia – Jose Yao Campos
Market Screener – Joselito Dee Campos
現在はSMCの持ち株は売却してますが、SMCの取締役には名前を残しています。デルモンテのCEOのようです。
PCOR (Petron Corporation) 石油
ペトロン、Petron Corporation(証券シンボル PCOR)はフィリピン最大の石油会社で、石油の精製や販売を行っています。Petronブランドのガソリンスタンドをフィリピン中で展開しています(1900か所以上)。石油とLPGガス販売でフィリピンシェア1位らしいです。

このペトロンの売上がサンミゲルグループ全体の売上の多くの部分を占めています。
BNCOM (Bank of Commerce) 銀行
バンクオブコマースは銀行です。2022年3月に上場しました。
総資産ではフィリピンの銀行の中で15位の中堅銀行です。銀行事業は売上はサンミゲルグループの中ではそれほど大きくはありません。
その他
その他上場会社関連あれこれ
- マニラ電力、MER(2013年、JGサミットに売却)
- フィリピン航空、PAL(2012年買収、2014年売却→ルシオ・タン)
- セメント会社のEAGLEはTOBで上場廃止(2023)
- サンミゲルビールのSMBも上場廃止(2018)
- PIZZA:ピザハットを誘致したのはサンミゲル 外食セクター#PIZZA
以上、サンミゲルグループについてまとめてみました。
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