歴代政権と財閥の関係

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フィリピンの歴代大統領に疎かったので調べてみました。フェルディナンド・マルコス以降の大統領を一覧、また、そのとき政権と親密だった財閥(クローニー)、敵対していた財閥について、わかってる範囲でまとめてみました。

なおググっただけの情報で、情報の正確性は他の記事にも増して自信はありません。間違い、新発見などあったら後日修正、追記していきます。

参考 フィリピン10大財閥

政権と財閥の関係一覧

政権補足親密敵対
フェルディナンド・マルコス
(1965-1986)
↓×ピープルパワー
・イロコス・ノルテ州生まれ
・ビートルズ来比(1966/6)
・戒厳令(1972/9)
・小野田少尉投降(1973/3)
・ボルテスV放送禁止(1979/8)
ダンディン・コファンコ
ルシオ・タン
ホセ・ヤオ・カンポス
×ロペス
×ハシント
×トダ
コラソン・アキノ
(1986-1992)
↓〇後継者に指名
・タルラック州生まれ
・ホセ・コファンコ家
・夫ベニグノ・アキノが暗殺
・初の女性大統領
・クーデターが7回発生
・バギオ大地震(1990/7)、ピナツボ噴火(1991/6)
ロペス、アヤラ
ロパ?
フィデル・ラモス
(1992-1998)
↓〇
・パンガシナン州リンガイェン生まれ
・軍人出身
・アジア通貨危機(1997/7)
ジョセフ・エストラダ
(1998-2001)
↓△ピープルパワー2
・映画俳優出身、PARE(男友達)を逆さ読みしたエラップの愛称で親しまれる
・貧困層中心に高い支持率
・不正蓄財で失脚、終身刑
・恩赦で釈放、マニラ市長に
ダンディン・コファンコ
ルシオ・タン
エミリオ・ヤップ
グロリア・マカパガル・アロヨ
(2001-2010)
↓×
・マニラ市生まれ
・任期中のエストラダ失脚により副大統領から昇格
・第9代大統領ディオスダド・マカパガルの娘
・911テロ(2001/9)
・退陣後、選挙法違反、公金不正流用で逮捕。が入院して凌ぐ。ドゥテルテ政権下で下院議長に
ベニグノ・アキノ3世 (2010-2016)
↓×変化を望む?
・オーストラリア生まれ、タルラックの下院議員を務める
・汚職なければ貧困なし
・リプロダクティブ・ヘルス法案
・コラソン・アキノの息子。独身
ロドリゴ・ドゥテルテ (2016-2022)
↓〇路線継承
・レイテ島のマアシン生まれ
・ダバオの検察官→ダバオ市長
・麻薬撲滅、治安回復
・汚職の追放、官僚主義撤廃
〇デニス・ウィ
△エンリケ・ラゾン
×ロペス
×ロベルト・オンピン
アヤラ、メトロパシフィック
ボンボン・マルコス
(2022-)
・マニラ生まれ

各政権

フェルディナンド・マルコス (1965-1986)

マルコス政権家で勢力を失った財閥の一番手はロペス家です。ロペス家は当初はマルコスと親密で、フェルナルド・ロペス(Fernando Lopez)は副大統領でした。ところが一転、1972年の戒厳令以降、取りつぶされました。

フィリピン最大の財閥で、盟主 E.ロペスの実弟 F.ロペスは副大統領を三度務めた人物であった。石油産業利権をめぐってロベス家と対立していたマルコスは、戒厳令後、企業の閉鎖・接収という形で同財閥の取り潰しにかかった。同家の所有するテレピ・ラジオ局と新聞社は戒厳令後直ちに閉鎖された。息子の E ・ロベス 2世がマルコス暗殺計画で逮捕されたことで身動きの取れなくなったロペスは、 73年、マニラ電力会社とその関連企業を、イメルダ・マルコスの兄を盟主とするロムアルデス家に引き渡すことで合意した。表面的には「新社会建設への協力Jという形ではあったが、総資産約 4億5000万ドルにものぼる同社グループが、わずか 1500ドルで「譲渡Jされたことは、事実上の資産接収であった。

伝統的エリート民主主義の「復権なき復活」(3) -戦後フィリピン政治体制変動に関する-試論- (2003)

その他とりつぶしにあった財閥

この他、ハシント財閥は、当時フィリピン唯一の総合鉄鋼施設であったイリガン総合鉄鋼所とその関連企業を政府に接収された。トダ家の場合、航空旅行代金としてイメルダ夫人に 100万ぺソの請求書を送りつけ、彼女の怒りを買ったのが原因で、フィリピン航空を乗っ取られた。その後、イリガン鉄鋼所は国営化され、フィリピン航空は(マニラ電力会社の場合同様)マルコスのクローニー(取り巻き財閥)の手に渡った。

伝統的エリート民主主義の「復権なき復活」(3) -戦後フィリピン政治体制変動に関する-試論- (2003)

一方、マルコス政権家で勢力を伸ばした財閥、人物としては、ダンディン・コファンコ
ルシオ・タン、ホセ・ヤオ・カンポスなどがいます。

フィリピン最大の製薬会社「United Laboratories Inc.」(通称ユニラボ)のオーナーである “ホセ・ヤオ・カンポス” は、マルコス元大統領との特別な関係によって政府機関や公立病院への医薬品の供給を独占し、ユニラボを国内最大の製薬会社に育て上げた。

フィリピンの財閥と有力層 (2008/1)

Wikipedia – Monopolies in the Philippines (1965–1986)

Wikipedia – Cronies of Ferdinand Marcos

ハシント(Jacinto)家

ハシント家はフィリピン最大のイリガン鉄工所を運営していましたが、旧マルコス政権下の戒厳令で接収されてしまいました。ハシント家は亡命しますが、マルコス退陣後、フィリピンに戻ります。イリガン鉄工所は民営化されましたが、2000年に経営不振で倒産。ラモン・ハシント氏はラモス政権やドゥテルテ政権でアドバイザーを務めました。

Jacintoはスペイン語の読みで(たぶん)ジャシントではなくハシントと読みます。

Wikipedia – Ramon Jacinto

RJ Group – HISTORY

ナショナルスチール社が倒産 (2000/3)

ベンジャミン・ロムアルデス

ベンジャミン・ココイ・ロムアルデス(Benjamin Kokoy Trinidad Romualdez)氏はイメルダ婦人の弟です。レイテ州知事。ぐぐった感じでは、ビートルズ事件を引き起こした問題人物、ロペス家から接収した企業を放漫経営で破綻させた無能人物、という風に語られています(マルコス追放側から見た歴史観の中では)。

Wikipedia – Benjamin Romualdez

1972 年の戒厳令下にマルコス大統領の義兄ベンハミン・ロムアルデスによりロペス財閥
は買収され、所有と経営を奪取される。ロムアルデスによる放漫経営と事実上の破綻の
末、ロペス家による経営の回復が行われてきた(小池[1993])。

フィリピン企業金融における財閥グループの役割

空港での事件についてはBBCの番組は「イメルダの弟(ベンジャミン・ココイ・ロムアルデス)が侮辱を赦さないとして起こしたようだ」との説を紹介した。

1966年の「イメルダ侮辱事件」とは?

コラソン・アキノ (1986-1992)

コラソン・アキノ(Corazon Aquino)時代には、マルコスのクローニーたちは力を失い、一方マルコス政権下で不遇だったアヤラ、ロペスなどの旧財閥(伝統的エリート)は力を取り戻しました。

前ベニグノ・アキノ三世大統領の母方コファンコ(Cojuangco)家や、その内務自治大臣などを務めたマニュエル・ロハス二世(Manuel Roxas II)などは、その末裔である。財界では、スペイン系の血を引くアヤラ(Ayala)家やロペス(Lopez)家が伝統的エリートの代表である。

「ピープル・パワーの物語」は、アキノ家のような伝統的エリートを「民主主義のシンボル」に祭り上げた。ピープル・パワーの物語とは、マルコス独裁体制による人権侵害、民衆蜂起による民主化という経験を経て、自由民主主義の価値と制度に基づいて国民国家を発展させていこうとする道徳言説である。ただし、ピープル・パワー物語とこの政治連合は、民主化後の政治改革を導くだけでなく、再開された民主主義における伝統的エリートの復権と支配を正当化する役割も果たした。

内政から見るフィリピンの外交米中間を揺れ動くドゥテルテの目的は何か (2021/3)

他、アキノ政権下で力をつけたっぽい財閥

製粉のリパブリック・フラワー・ミルズと家電のコンセプション・インダストリーズにおいてアキノ政権下でその業績を急成長させた “コンセプション・ファミリー”

フィリピンの財閥と有力層 (2008/1)

フィデル・ラモス (1992-1998)

親密、敵対財閥情報なし(未発見)

ジョセフ・エストラダ (1998-2001)

映画俳優出身のジョセフ・エストラダ(Joseph Estrada)は、高い支持率で大統領になりました。

この時代、マルコスクローニーが復権しました。

マルコスの代理人を務め、彼の失脚後数々の会社をそのまま引き継いだ。その内の6社をイメルダが自分のものだと裁判を起こし、現在次々と確たる証拠がないとしてルシオ・タンが勝訴を続けている。

エミリオ・ヤップと二人でエストラーダの選挙を援助し、彼の政権で完全に復権を果たす。二人で株価を操作し、多大な利益をエストラーダに与えた。二人で影の内閣を作り、閣議にも同席、訪中にも同行し彼の対中国政策にも関与した。

ルシオ・タンとエミリオ・ヤップ (2009/8)

グロリア・マカパガル・アロヨ(2001-2010)

親密、敵対財閥情報なし(未発見)

ベニグノ・アキノ3世 (2010-2016)

親密、敵対財閥情報なし(未発見)

ロドリゴ・ドゥテルテ (2016-2022)

記憶に新しい、ドゥテルテ大統領時代に不遇な財閥といえば、再びロペス家です。ABS-CBNはTV・ラジオ放送の免許が更新できなくなりました。また、アヤラらメトロパシフィックも不遇だったようです。アヤラのマニラウォーターは売却され、エンリケラソン傘下になりました。

2019年には、マニラ首都圏の水道事業2社に対して、不正疑惑を理由にライセンス剥奪の脅しをかけた。これを受けて、アヤラ家は所有するマニラ・ウォーターの株式51%を、ドゥテルテに近い実業家のエンリケ・ラソン(Enrique Razon)に譲渡した。マニュエル・パギリナン(Manuel Pangilinan)の所有するマイニラッド社は、法人税を前倒し払いすることで、これをしのいだ。パギリナンは民主化後に台頭した財界人だが、何らかの理由で政権との関係が悪化したようだ。またドゥテルテ政権は、ロペス家の所有する国内最大の通信社 ABS-CBN に対しては、2016年選挙でドゥテルテ派の広告を放送しなかったり、麻薬戦争を批判的に報じたり、外資を経営に参加させていると批判してきたが、2020年にはライセンス失効を理由に放送停止を命じる。

内政から見るフィリピンの外交米中間を揺れ動くドゥテルテの目的は何か (2021/3)

The “franchise attack” is part of the strategy that the Duterte administration used to force the Zobel Family to sell Manila Water [MWC] to Enrique Razon. It’s what Duterte used to kill the franchise renewal of ABS-CBN [ABS]. And it’s the sword that Duterte held over the head of Globe [GLO] and PLDT [TEL] when he was forcing Dito Telecommunity [DITO] into the marketplace with sweetheart terms and treatment.

Synergy Grid battling political pressure to ditch China (2023/5)

その他、ダバオのデニス・ウィ氏はドゥテルテ大統領に近い人物として勢力を伸ばしました。

このように伝統的な財閥を叩く一方で、ドゥテルテは新興の財界エリートとの連携を強化している。新興の財界エリートには、1990年代に経済自由化が本格化する文脈で台頭し、一代で富を築き上げた華人系実業家が多い。彼らは様々なビジネスを背景に持つが、2000年代に入ると、海外出稼ぎ者とその家族の消費活動によって急成長した不動産業に軒並み参入し、総資産額の点で伝統的エリートを追い抜く者も出てくる。代表的なドゥテルテ・クローニーは、ダバオ出身の華人系実業家デニス・ウイ(Dennis Uy)である。ウイは地方都市の一実業家から国家レベルのインフラを担う主要な経済アクターへと、ドゥテルテおよび中国資本との密接な関係を通じてのし上がってきた。

内政から見るフィリピンの外交米中間を揺れ動くドゥテルテの目的は何か (2021/3)

その他、旧マルコス政権で貿易産業相だったロベルト・オンピン氏(2023/2没)が汚職で複数の上場会社から追放されました。

参考 ウデナグループ [DFNN] 最初のPIGO銘柄

ボンボン・マルコス(2022-)

ボンボン大統領政権下では、現実路線、中道政策なのか、主要財閥リーダーが外資誘致のために大統領に同行したり、仲良くやっているように見えます。(私の知識不足、裏ではいろいろありそうですがとりあえず)

マルコス比大統領就任 政権と近い財閥に恩恵 (2022/7) サンミゲル、アヤラは恩恵。グレゴリオ・アラネタ。ケビン・タンもボンボンの友人

参考 マハリカファンド

その他

以上、フィリピンの歴代大統領(マルコス以降)と財閥の関係について調べてみました。アイキャッチ画像はWikipeida ラプラプより(特に意味はなし)

参考

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