食品セクター(中堅以降)

食品セクター(PSEセクター分類で Industrial / Food, Beverage & Tobacco)の銘柄について、時価総額の比較的小さい中堅以降の銘柄で知らない銘柄がいくつもあったのでざっと調べてみました。

フィリピンの農業事情

フィリピンの主な農作物の自給率は以下のようになっています。

砂糖や玉ねぎが不足するフィリピンの食糧事情(2022/9/12)

コメやトウモロコシは国内向けが主で、概ね自給できていますが、一部輸入に頼っています。マルコス政権では食料安全保障の観点からコメやトウモロコシの自給率を上げたいと考えています。

一方、バナナ、パイナップル、ココナッツなどは主に輸出向け農産物となっています。

また、小麦については、フィリピンでは気候的に作れないのでほぼ輸入です(小麦の製粉所フィリピン国内に多数あります)。

(TODO 肉については？豚、鶏は国内生産、牛は輸入が多い印象だけど、統計データ的なもの)

上場銘柄一覧

以下のリストは、PSEセクター分類がIndustrial、サブセクターがFood, Beverage & TabaccoのPSE上場銘柄一覧を時価総額順に並べたものです。この一覧のKEEPR以下の銘柄について調べていきます。

KEEPR (The Keepers Holdings, Inc.)　輸入酒販売、COSCOグループ

キーパーはワインやスピリットの輸入、販売を行っています。主なブランドにMontosco、Meritus、Premierなどがあります。

業績は順調で、売上も利益も拡大しているようです。

ピュアゴールドを傘下に持つコスコグループの子会社で、2021年に裏口上場しました。以前の社名はダヴィンチ(DAVIN)でした。

参考 COSCOグループ

DELM (Del Monte Pacific Limited)　フルーツ缶詰他、カンポスファミリー

デルモンテ・パシフィックは、フルーツや野菜などの加工製品を製造販売しています。

デルモンテ(Del Monte)、S&W、コンタディーナ（英語版）、カレッジ・イン(College Inn)、フルーツ・バースト(Fruit Burst)、フルーツ・ナチュラル(Fruit Naturals)、オーチャード・セレクト(Orchard Select)、サンフレッシュ(SunFresh)がある。

Wikipedia – デルモンテ・フーズ

デルモンテは元々アメリカの会社でしたが、2014年にフィリピンのデルモンテ・パシフィックがアメリカのデルモンテを買収して傘下に収めています。

なお、フィリピン、インド以外のアジアの地域では日本のキッコーマン子会社がデルモンテブランドの製品を製造販売しています。

本社はバージン諸島にあり、フィリピン証券取引所とシンガポール証券取引所に重複上場しています。決算資料の通貨はペソでなく、ドルで表記されています。

参考 フィリピン上場会社本社マップ

大株主は61.55%を保有するカンポスファミリーの食品会社(非上場)、NutriAsia Pacific Limitedです。

キーパーソンの一人は、ジョセリト・カンポス氏(Joselito D. Campos, Jr.)です。デルモンテ・パシフィックのCEOをつとめています。また、親会社NutriAsiaの会長、その他にサンミゲルコーポレーションのディレクターも務めています。ユニラボ創業者のJose Yao Campos氏の長男です。

Wikipedia – NutriAsia

MarketScreener – Joselito Dee Campos

ブログ記事 サンミゲルグループ

なお、ユニラボはフィリピン最大の製薬会社(非上場)で、創業者はJose Yao Campos氏とMariano K. Tan氏の２人、Mariano K. Tan氏の息子がフィリピン長者番付で35位に入っています。

UNILAB – Our Humble Beginnings

Forbes – Mariano Tan Jr.

PIZZA (Shakey’s Pizza Asia Ventures, Inc.)　ピザチェーン、センチュリーパシフィックグループ

シェーキーズ・ピザ・アジア・ベンチャーズは、アメリカ発祥のシェーキーズピザチェーンを運営しています。

シェーキーズはもともとサンミゲルが誘致、運営していましたが、現在はセンチュリーパシフィックグループ傘下です。

参考 センチュリーパシフィックグループ

RFM (RFM Corporation)　小麦、コンセプションファミリー、連続増配

RFMは小麦の製粉事業からはじまり、様々な商品の製造販売をしています。

配当をけっこう出す会社で、2022年は0.25ペソで、現在の株価3.21ペソで計算すると配当利回り7.7%です。2015年以降毎年連続増配しています(2014年以前は未チェック)。ただ利益が毎年増えているわけではなく、ちょっと出しすぎ感もあり、そろそろ連続増配は止まるかもしれません。

コンセプションファミリーが経営しており、大株主(Horizons Realty、Triple Eight Holdings)もコンセプションファミリーです。

Wikipedia – RFM Corporation

フィリピンの小麦は輸入

なお、小麦はフィリピン国内ので栽培は現実的でないのでほぼ輸入です。RFMは製粉(小麦から小麦粉を作る)や、食品加工(小麦粉からパスタやパンなどを作る)を行っています。なお、フィリピンで製粉を行っている上場会社には、RFM、LFM、URC、MONDE、FBなどがあります。

日本も小麦はほぼ輸入ですが、北海道などで一部栽培もされています。

輸入元は上の資料によると、トルコ、ベトナム、インドネシアなどが多いようです(日本の場合は、アメリカ、カナダ、オーストラリア)。

AXLM (Axelum Resources Corp.)　ココナッツ、MPAVが資本参加？

アクセラム・リソースはココナッツの製造販売、輸出をしています。製造工場がミンダナオ、またアメリカとオーストラリアに加工施設があります。

メトロパシフィック(アグロ・ベンチャー、MPAV)と資本提携し、メトロパシフィックが30%の株を購入するというニュースで株価が大きく上昇したのですが、その後全戻ししています。最新のPublic Ownership Reportにはメトロパシフィックの名前がまだ入ってない？

Axelum forges strategic partnership with Metro Pacific Agro Ventures, Inc. (2023/2/6)

年次業績は比較的順調。ただ、直近の2023年1Qは減収で赤字になっています。

VMC (Victorias Milling Company, Inc.)　砂糖

ビクトリアス・ミリングはネグロス島で砂糖の生産、販売をしています。また関連事業として砂糖からアルコール、エタノールなどを製造する蒸留事業も行っています。

LTグループが約30%の株を保有しています。1997年のアジア危機で経営破綻してPSE取引停止、2012年に取引再開されました。まだ再建手続き中は完了してはいないようです。近年の業績は順調で、2021年から配当も出し始めました。

参考 [VMC] ビクトリアスミリング

ANI (AgriNurture, Inc.)　農業商社、ティウグループ

アグリナーチャーは農業商社です。野菜、フルーツの輸入、輸出、仕入れ、販売を幅広く行っています。Big Chill、Sugarhouseなどのブランドでフルーツやジュースを販売しています。また、アメリカシアトル発祥のタリーズコーヒーのフィリピンのフランチャイズを展開します。

参考 ティウグループ#ANI

最近のニュースでは、2023年はじめにトウモロコシ生産に26億ペソ投資するというニュースがありました。一方SROでの資金調達も予定されています。

フィリピンのアグリ企業ANIがトウモロコシ生産を開始 (2023/2/24)

AgriNurture ventures into large-scale corn farming (2023/2/22)

また、6月末にGREEN株主に対してANI現物配当(6/27権利落ち日)が行われました。またその前後にティウ氏→大株主のEarthright HoldingsにGREEN、ANI株共大きく移動しています。それがどういう影響なのかよくわからないのですが、6/27以降株は急落しています。

Greenergy’s Tony Tiu passes bags to Li Pei Feng (2023/7/11)

Geenergy disclosed that Antonio Tiu has been buying and selling… (2023/2/23)

MACAY (Macay Holdings, Inc.)　RCコーラ、ヤオファミリー

マッケイ・ホールディングスは飲料ビジネス系の持ち株会社です。RCコーラなどの炭酸飲料を製造・販売しています。ヤオファミリーにより買収され、2014年に裏口上場されました。

なお、RCコーラは私はよく知らなかったのですが、コカコーラ、ペプシコーラに次ぐ世界シェア３位？のコーラらしいです。

Wikipedia – Macay Holdings

第三のコーラ・RC

ジュース王 アルフレッド・ヤオ

会長はジュース王の異名を持つ、アルフレッド・ヤオ(Alfredo Yao)氏です。ヤオ氏は、ジュースのZest-Oを作った人物です。ドイパック(スタンディングパウチ？)というパッケージをフィリピンに持ち込んで成功しました。また、Zest AirwaysというLCCを立ち上げました(現在はAirAisaに統合)。Philippine Business Bank(PBB)の創業者でもあります。

Forbes – Alfredo Yao

Success Story of Alfredo Yao: The Juice King

MarketScreener – Alfred M. Yao

MAXS (Max’s Group, Inc.)　外食

マックスはフィリピン食レストランMax’s、Pancake House、Yellow Cab Pizzaなどを運営しています。海外展開もしています。利益率は高いのですが、店舗数の増加はゆるやかで、あまり成長はしていないようです。

参考 外食セクター#MAX

FCG (Figaro Coffee Group, Inc.)　外食

フィガロコーヒーはコーヒーチェーンです。2022年1月上場の若い会社です。コーヒー店の他にAngel’s Pizzaというピザ店も運営していて、このピザチェーンも急拡大しています。

MONDEが15%を保有しています。最近優先株の発行を決議しましたが、少数株主無視じゃないですか？という指摘がありました。

参考 外食セクター#FGC

FRUIT (Fruitas Holdings, Inc.)　外食

フルータスはジューススタンドを運営しています。フードカートという屋台のような小型店舗でブコジュース、シェイク、フルーツジュースなどを販売しています。BALAIの親会社です。

参考 外食セクター#FRUIT

CAT (Central Azucarera de Tarlac, Inc.)　砂糖、コファンコ

セントラル・アズカレラ・デ・ターラックは、ターラックの砂糖生産会社です。会計年度は7/1～6/30。業績は赤字ではありませんが、ここ何年か十何年かパッとしないようです。

会長、CEOはマーティン・ロレンゾ氏が務めています。ロレンゾ氏はABAの取締役も務めています。

MarketScreener – Martin Ignacio Parez Lorenzo

なお、central azucareraというのはスペイン語で砂糖精製所という意味のようです。バタンガスのCentral Azucarera Don Pedro(ROX子会社)、イロイロのCentral Azucarera de San Antonioなど、フィリピン各地にCentral Azucareraという名前の施設、会社があるようです。

コファンコ家

CATはコラソン・アキノ大統領(1986-1992)の実家方のコファンコ家が所有していたらしく、CATには息子のベニグノ・アキノ3世元大統領(2010-2016)も若いころ勤務したとか。

なお、サンミゲル旧会長のダンディン・コファンコ氏とは別系統のコファンコ家(親戚関係なんだけど、地元では敵対関係だったみたいな)です。

と、アキノ大統領のホセ・コファンコ家は対立関係にあったらしいです(TODO このへんの関係整理)。

リサールの山小屋から – コファンコ家

Cojuangcos sell Central Azucarera de Tarlac (2014/7/29)

LFM (Liberty Flour Mills, Inc.)　小麦

リバティ・フラワー・ミルズは小麦の製造加工を行っています。

2021年まで順調に売上を伸ばしてきていたのですが、2022年は赤字転落しています。たぶんウクライナ戦争の影響などで輸入小麦の価格高騰？

2022年にby way of introduction形式で不動産子会社のLPCを上場させました。

参考 [APVI] アトラス・プロパティー・ベンチャーズ#LPC

VITA (Vitarich Corporation)　豚肉、飼料

バイタリッチは鶏肉や飼料の製造販売を行っています。売上は伸びているのですが、利益はなかなか上がらず、株価もずっと軟調です(でした？)。

参考 [VITA] バイタリッチ

追記：豚肉事業にも進出予定のようです。

Vitarich pushes through plan to enter hog industry (2023/7/4)

FOOD (Alliance Select Foods International, Inc.)　ツナ缶製造販売

アライアンス・セレクト・フードはツナ缶の製造販売、輸出を行っています。主に他社ブランドの販売(PB？OEM？)を行っています。

ここ数年、赤字で、売上も減少しておりじり貧です。

↓最近のニュース。資本がらみのホンワカ系？ニュースが多い？詳しく見てませんが、もしかしたら買収話などがあるかも？

Alliance Select Foods suddenly realized it owns land (2023/1/13)

SEC voids Alliance Select owner’s share purchase (2023/1/9)

ROX (Roxas Holdings, Inc.)　砂糖、ファーストパシフィック系

ロハスホールディングスは、バタンガスやネグロス島で砂糖生産を行っています。

ファーストパシフィックが資本参加しており、6割の株を保有しています。マニュエル・パンギリナン氏がディレクターに入っています。

Company Profile 年表

昨年2022年は砂糖価格高騰があって売上3倍になったにも関わらず赤字で、コスト高体質なのか改善が必要なようです。

PBR0.1xの資産株です(土地なのか生産設備なのか在庫の山なのか内訳未確認)。SimplyWallSTだと-73.3%割安判断になっています。

次のRCIは同じロハスグループの会社です。

参考 メトロパシフィックグループ(ファーストパシフィックグループ)

RCI (Roxas and Company, Inc.)　不動産、ホテルなど

ロハス＆カンパニーは、不動産、ホテル、ココナッツ加工など複数の事業を行っている持ち株会社的な会社です。砂糖生産のROXは関連会社で、RCIが20.56%の株を保有しています。

PBR0.1xの資産株で、バタンガスに大量の土地を保有していますが、高速道路が接続され観光地として注目され毎年土地評価額が値上がりしています。ただ、農地改革計画対象の土地で裁判中で、その行方によってはその土地がどういう扱いになるのかよくわかりません。

参考 [RCI] ロハス＆カンパニー

BMM (Bogo-Medellin Milling Company, Inc.)

ボゴ – メデリン・ミリングはセブの砂糖生産会社です。決算提出遅れで2022年末から売買停止になっていましたが、現在のPSEではOPENになっているので、一応売買可能？最後に売買されて値段がついたのが2022/12/23で、ほぼ売買されてないように見えます。

業績はここ数年、毎年赤字のようです。

MG (Millennium Global Holdings, Inc.)

ミレニアム・グローバルは水産物や農業製品を製造、輸出しています。

業績は2018年から毎年赤字です。

SFI (Swift Foods, Inc.)

もともとRFMの食肉部門がスピンオフして出来た会社ですが、2006年にRFMにほとんどの事業が移管されて、残りは一部の鶏肉事業のみとなっています。

休眠会社の箱会社なのかと思ってましたが、一応営業はしているようです。

以上、食品セクターの株をざっと見てみました。業績は微妙な会社も多いですが、農業セクターは重点国策セクター、また買収対象としても賑わうセクターで儲かるチャンスが眠ってそうな気はします。

アイキャッチ画像はWikipediaより