JGサミットグループ

企業グループ

JGサミット(ゴコウェイ、ロビンソン)グループについて調べてみました。

JGサミットグループは、中国系移民のジョン・ゴコウェイ(John Gokongwei)氏が一代で築いた企業グループです。食料品のユニバーサルロビーナ、LCCのセブパシフィック航空(上場会社はセブエアー)、ショッピングモールのロビンソンモール(上場会社はロビンソンランド)などを傘下に持ちます。一般消費者向け(フィリピンに来たら実際目にする)のビジネスが多く、なじみのある企業グループだと思います。

グループの子会社、関連会社の概要を知るには、書籍、ASEAN企業地図がわかりやすくてオススメです 。今回のJSサミットなどASEAN企業地図に載ってる主要企業グループについては、わざわざ自分の下手な記事にまとめる必要はないと思っていましたが、自分の理解のためにまとめてみました。

ポイント

  • 創業者ジョン・ゴコウェイ(John Gokongwei)→グループ名はイニシャルJG
  • 主力事業:食料品、小売、不動産、航空旅客
  • 上場子会社 JGS、URC、RRHI、RLC、RCR、CEB、APVI
  • 上場関連会社(少数持ち分株主、投資先) MER、TEL

ポイント2(今回調べてて新たに気づいた点)

  • 創始者のフルネームはJohn Robinson Lim Gokongwei Jr. → ロビンソンというブランド名も自分の名前からだった。なおロビーナは娘の名前
  • 小売りのRRHIは持ち株会社JGS傘下でない(JGSでなくゴコウェイファミリーが大株主)
  • 海外売上比率もそこそこある

創業者 ジョン・ゴコウェイ

ジョン・ゴコウェイ氏(John Gokongwei Jr.、1926~2019)は、セブの中国系移民の裕福な家庭に生まれました。曽祖父は19世紀にセブで最も裕福な事業家、父親はセブで最初にエアコン付映画館を作った人物だったとか。

しかし一族は第二次世界大戦中の不景気と事業の失敗で全ての財産を失ってしまい(父親は突然の病気と事故で死亡)、ジョンは無一文から家族を支えるために働きはじめます。

ピーナッツを売る露店からはじまり、カヌーを買ってレイテ、ボホール、後にマニラまで行き来し売買を行うようになりました。第2次世界大戦後はアメリカから輸入販売を行いました。

1950年代にコーンスターチ製造のビジネスをはじめました。コーンスターチはビールの原料で、サンミゲルが主要顧客でした。後に、食品の製造販売を行うユニバーサル・ロビーナを設立します。

その後、不動産、ショッピングモールなど事業を多角化させていきました。1990年代にはLCCのセブパシフィックを設立します。

ジョンのフルネームは、”John Robinson Lim Gokongwei Jr.”で、ロビンソンモール、ロビンソンランドなどのロビンソンというブランド名は彼の名前から来ています。ちなみに、ユニバーサルロビーナのロビーナは娘の名前です。また、JGサミットは John Gokongweiというジョンのイニシャルから来ています(たぶん)。

Wikipedia – John Gokongwei

ジョンは2019年に93歳で他界。現在JGサミットの会長は、ジョンの弟のジェームズ・ゴー(James L. Go)氏が務めています。また、ジョンの息子のランス・ゴコウェイ(Lance Y. Gokongwei)氏がCEOです。

Wikipedia – Lance Gokongwei

なお、ゴティアヌンファミリー(フィルインベスト)やガイサノファミリー(MRSGI)とは親戚関係らしいです。

http://www.filipinogenealogy.com/2012/02/pedro-gotiaoco-family.html

参考 RapplerとWikipediaのJohn Gokongwei記事より(記事末にまとめてURL記載)

ポートフォリオ

以下は会社資料(Definitive Information Statement)のセグメント情報です。

Definitive Information Statement

これによると、食品事業(URL ユニバーサルロビーナ)が売上、収入とも大きいです。

航空旅客(CEB セブエアー)は売上は大きいですが、コロナの影響で収入は赤字です。2023年は黒字で収益に寄与する予定です。

不動産(RLC ロビンソンランド)は売上はそこそこですが、収益に大きく寄与しているのがわかります。また石油化学の子会社は上場していませんが、2022年はけっこう赤字だったようです(原油高?)。

なお、小売り(RRHI ロビンソンリテール)については、持ち株会社JGS傘下でないのでここには書かれていません。

また、海外売上比率も2022年で28%とけっこう大きくなっています。

その他、上場していませんが、以下の事業にも投資しています。

  • ロビンソンバンク(銀行):BPIと合併
  • United Industrial Corporation (UIC):シンガポールの上場不動産会社。敵対的買収をしかけたが経営権は獲得できず、37%保有にとどまる
  • JG Summit Olefins Corporation:石油化学。2022年決算では赤字っぽい
  • GoTyme: デジタルバンク。シンガポールのTymeとの合弁 銀行セクター

PSE上場企業

以下がJGサミットグループ関連ののPSE上場会社一覧です。

JGサミットグループのPSE上場会社 (2023/5末時点)

持ち株会社がJGS(JGサミット)です。

子会社にURC(ユニバーサルロビーナ、食料品 55.9%)、RRHI(ロビンソンリテール、小売り)、RLC(ロビンソンランド、不動産 62.6%)、RCR(REIT)、CEB(セブエアー、旅客 66.1%)、APVI(アトラスプロパティー 64.8%)があります。(%は持ち株比率)

また規模の大きな投資先としてMER(マニラ電力 26.4%)、TEL(PLDT、11.3%)があります。

JGS(JG Summit Holdings, Inc.) 持ち株会社

持ち株会社はJGサミットホールディングスです。

決算発表では傘下のグループ会社をまとめた業績が発表されます。なお、小売りのRRHIもゴコウェイファミリーが経営していますが、持ち株会社JGSの傘下ではないようで、小売りセクターの業績がJGSの業績には入っていないようです。

Definitive Information Statement

URC(Universal Robina Corporation) 食品

ユニバーサルロビーナは、JGサミットグループの中核子会社で、食品の製造販売を行っています。

主力製品にJack ‘n Jill(スナック)、C2(お茶、ソフトドリンク)、Great Taste(コーヒー)などあります。

子会社の合弁会社で、日清ユニバーサルロビーナ(日本の日清食品との合弁)、カルビーURC(日本のカルビーとの合弁)、ダノンユニバーサルロビーナ(フランスのダノンとの合弁)があります。

Annual Report

また、消費者向けの食品だけでなく、小麦、砂糖、エサなど農業向けの商品も販売しています。消費者向け:農業向けの割合は、売上で10:4、利益で15:8ぐらいになっているようです。

Definitive Information Statement

海外売上比率も上がってきて、2022年で約21%(32÷149)です。

Definitive Information Statement

RRHI (Robinsons Retail Holdings, Inc) 小売り、DFIグループと提携

ロビンソンリテールは小売り業で、いろいろな形の小売店を運営しています。売上ではスーパーマーケットが約半分と大きいようです。

Robinsons Supermarket、Robinsons Easymart、ShopwiseなどがRRHIのスーパーマーケットです。

Definitive Information Statement

一方、利益ではドラッグストアがけっこう大きいようです(売上のわりに。利益率が高いぽい)。Southstar drug、TGP、Rose PharmacyはRRHIのドラッグストアです。

プレゼン資料 2023 1Q

多くの種類の店舗を展開しています。100均のダイソーや、コンビニのUncle John(元ミニストップ)もRRHIです。

https://www.robinsonsretailholdings.com.ph/our-company/#view

株主構成ですが、他のグループ会社と異なり、親会社がJGSでないです(なのでJGSの決算レポートにはRRHIのことが書かれていません)。大株主はゴコウェイ一族3人で14.62%、一族の持ち株会社JE Holdingsが33.29%保有している他に、GCH Investments Pte Ltdが21.37%を保有しています。

Public Ownership Report

GCH Investmentsは、香港のDFIグループの会社(法的所在地はシンガポールとバミューダ)で、ロビンソンリテールと業務資本提携をしています。DFIグループからルスタンスーパー(フィリピンの高級スーパー)の株を取得し、ルスタンスーパーはRRHI傘下になったようです。

Dairy Farm to Partner with Robinsons in the Philippines (2018/3/23)

Wikipedia – DFI Retail Group

Robinsons Retail: A Leading Player In The Under-Penetrated Philippines Retail Industry (2017/2/14) 誰かの分析

日興AM 組み入れ銘柄紹介 – ロビンソンズ・リテール・ホールディングス (2018/1/23) 日本語銘柄紹介

追記:フィリピンのドラッグストア

フィリピンのドラッグストアシェア(2018)は、以下のようになっています。

https://www.chameleon-pharma.com/trends-of-the-retail-pharmacy-market-in-the-philippines/

このうち1位のGenerics Pharmacy、4位のSouthstar Drug、5位のRose Pharmacyがロビンソンリテール傘下になっており、フィリピンのドラッグストア業界はロビンソンリテールが強いようです。

なお、2位のMercury Drugは独立系、Watsonは(たぶん)SMグループ、Genrikaはアヤラ系です。

Robinsons takes majority control of Generics Pharmacy (2016/5/18)

RLC (Robinsons Land Corporation) 不動産

ロビンソンランドは総合不動産会社です。利益を見るとモール賃貸、オフィス賃貸の割合が大きいようです。

プレゼン資料 2023 1Q

なお、ショッピングモールについてですが、不動産のRLCはロビンソンモールの土地や建物を保有して、テナントに貸して家賃収入を得ています。一方、小売りのRRHIはロビンソンモールで家賃を払ってテナント(スーパーその他)を運営しています。(もちろん、ロビンソンモールにはRRHI以外のテナントもありますし、RRHIはモール以外にも店舗を出しています)

参考 不動産セクター

RCR (RL Commercial REIT, Inc.) REIT

RCRはロビンソンランドがスポンサーのオフィスREITです。

参考 REIT

CEB (Cebu Air, Inc.) LCC

セブエアーはLCC(ローコストキャリア)です。

2020年以降コロナで赤字でしたが、2023年は急速に業績回復、拡大中です。ただ、2019年以前のように配当が出せるまでになるにはまだ数年かかりそうです。

参考 運輸セクター

APVI (Altus Property Ventures, Inc.) 田舎ロビンソンモール

APVIは不動産会社で、ルソン島北端のイロコスノルテのロビンソンモールを管理しています。RLCの株主に現物配当の形で株を配ってIPOしたところ、上場初日+2000%という値段をつけた伝説の株です。

参考 [APVI] アトラス・プロパティー・ベンチャーズ

ここまでは過半数の株を保有する子会社です。以下は少数持ち分の投資先の上場企業です。

MER (Manila Electric Company) 電力、持ち分26.37%

マニラ電力はフィリピン最大の電力会社です。大株主構成は以下のようになっています。Metro Pacific Investments Corp.とBeacon Electric Asset Holdings, Inc.はメトロパシフィック系の会社で合わせて約50%となります。JGサミットの持ち分は26.37%となっています。

Public Ownership Report

参考 電力セクター

TEL (PLDT Inc.) 通信、持ち分11.27%

PLDTは通信会社です。固定電話、固定インターネット、携帯電話などを事業を行っています。

また電子マネーPayMayaを運営するVoyagerが子会社で、GCash同様IPOを計画しています。

株主構成は以下のようになっています。ファーストパシフィック系が25.6%(どれとどれ?)、NTT系が20.35%、JGサミットは11.27%の株を保有しています。

Public Ownership Report

参考 通信セクター

First Pacific プレゼン資料 2023

なお、MERやTELの株主構成はちょっと分かりにくいのですが、ASEAN企業地図の図が分かりやすいです(少し比率が変わってますが、概ね同じ?)。2023/7/24に第3版が発売予定、買います。

ASEAN企業地図 第2版(JGサミットグループ抜粋)

なお、JGサミットは2000年代にSun Celluarに投資していました。Sun CelluarはSmart、Globeに並ぶ第3の携帯電話キャリアだったらしいですが(今のDITOみたいな?)、2011年にPLDTが買収したらしいです。現在、JGサミットがPLDTの大株主にいるのはその名残り?

以上JGサミットグループについてまとめてみました。

参考、その他

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